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2022年12月(令和4年12月)

インボイス(7)どの書類をインボイスにすればよい?

令和5年10月からインボイス制度(消費税の適格請求書等保存方式)が始まります。
適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者のみがインボイス(適格請求書)を発行することができます。
自社が発行する領収書、請求書、納品書などの書類のうち、どれをインボイスにすればよいのでしょうか?

Q1.どのような書類がインボイスになりますか?

A1.インボイス制度では、書類の名称に関係なく、下記の必要な記載事項が記載されたものがインボイスになります。
【インボイスに必要な記載事項】

1.適格請求書発行事業者の氏名又は名称 及び 登録番号
2.取引年月日
3.取引内容(軽減税率対象品目である旨)
4.税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜 又は 税込) 及び 適用税率
5.税率ことに区分した消費税額等
6.書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

 ※1.4.5の赤字部分は、現行の記載事項に、新たにインボイス制度において追加される事項です。

現在、取引先に発行している書類のうち、消費税額等を通知している書類があれば、それは何かを確認しましょう。通常は、納品書、請求書、領収書(レシート)でしょう。
取引先に発行する書類を把握し、どの書類に必要な記載事項を記載すればインボイスになるかを確認し、インボイスとする書類を決めましょう。

Q2.当社では、取引の都度、取引先に商品名を記載した納品書を発行し、請求書は1か月分をまとめて発行しています。この場合、どれをインボイスにすればよいのでしょうか?

A2.通常は、請求書をインボイスとすればよいでしょう。
納品書に適用税率や消費税額等を記載されているケースでは、納品書をインボイスとする方法もあります。
また、どれをインボイスにするかは、仕訳の計上時期にも影響があります。
インボイスにする書類を決めたら、取引先に伝えたり、事前に協議することも検討しましょう。

(1)請求書をインボイスにするケース
現在使用している請求書に、登録番号などの必要事項を追加記載することでインボイスとします。
この方法では、納品書の様式を変更する必要はありません。
ただし、請求書発行まで消費税額等が確定しないため、納品時に、売手・買手ともに消費税額等の仕訳を経常することができません。

(2)納品書をインボイスにするケース
取引の都度発行する各納品書に必要な記載事項を全て記載すれば、請求書に記載事項を記載しなくても、納品書をインボイスとすることができます。
この方法は、納品時に消費税額等を確定できるため、納品の都度、消費税額等を含めた仕訳を計上することができます。
ただし、得意先が納品書の保存を失念し、請求書のみを保存することのないように、事前に説明しておきましょう。

(3)納品書と請求書を合わせてインボイスにするケース
インボイスは、一つの書類のみで必要な記載事項を全て満たす必要はありません。
納品書と請求書の相互関連が明確であり、取引内容を正確に認識できる方法であれば、その複数の書類の全体によってインボイスの記載事項を満たすことも認められています。
例えば、納品書には日々の取引内容(軽減税率である旨を含む)を記載し、請求書に、登録番号、税率ごとに区分した消費税額等及び適用税率を記載すれば、全体でインボイスに必要な記載事項を満たすことができます。


Q3.当社は、雑貨を販売する小売業です。現在発行しているレシートや手書きの領収書をインボイスにすることはできますか?

A3.レシートや手書きの領収書であっても必要な記載事項が記載されてあれば、インボイスとして発行することができます。
また、小売業をはじめ、飲食業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業のように不特定多数の者を相手に取引を行う事業者は、インボイスに代えて、記載事項を簡易にした簡易インボイス(適格簡易請求書)を発行することができます。
簡易インボイスの記載事項は、Q1.の【インボイスに必要な記載事項】と比べると以下の記載が異なります。

・「税率ごとに区分した消費税額等」または「適用税率」のいずれか一方の記載で足りる(両方記載することも可能)
・「書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称」の記載が不要

借入金の元本を返済するために必要な利益は?

新型コロナウイルス特別貸付で借入をした企業では、そろそろ元本の返済が始まる頃です。
売上が回復し、資金繰りが安定していれば問題ないですが、元本の返済が始まると現状のままでは預金は減少します。
返済に必要な利益がいくらなのかを計算し、具体的な利益目標を設定しましょう。


【返済資金の確保】
2020年3月にスタートした実質無利子・無担保の「ゼロゼロ融資」は、「特別利子補給制度」による利子の免除は3年間なので、3年を経過すると利子の支払いが始まります。また、「元本返済の据置」を選択した場合、元本の返済も始まります。
借入金の返済原資は「利益」です。「利益」を確保するための方策は2つです。

【利益確保の方策】
1.限界利益を引き上げる
2.固定費を極力抑える

この両方をミックスさせて黒字決算を実現していきます。

【借入金元本返済の目標利益】
 目標利益=(借入金の年間元本返済額 ー 減価償却費)

例)
借入金総額:1,500万円
年間の借入金元本返済額:300万円
年間の減価償却費:100万円

目標利益=(年間の借入金元本返済額300万円 ー 減価償却費100万円)= 200万円

上記の例の場合、年間営業日数が300日であれば、1日当たりの目標利益=200万円÷300日=6,666円
1日当たり約7,000円の利益確保が目標となります。

限界利益率(粗利率)が40%の場合、1日当たりの売上アップ目標=7,000円÷0.4=17,500円
1日当たりの売上は、現在よりも約18,000円プラスを目標設定とします。


【将来的な目標利益】
繰越欠損金がある間は、借入金返済のための目標利益は、上記で計算した金額となります。上記の例だと、年間の目標利益は200万円です。
今後、利益を出し続け、繰越欠損金の控除を使い切ってしまった後は、利益に対して法人税等が課税されます。つまり、税金を支払った後の利益(当期純利益)から借入金の返済を行うことになります。法人税等を課税されるようになった時の利益目標は、下記の計算式で算出します。

【将来的な目標利益】
 目標利益=(借入金の年間元本返済額 ー 減価償却費)÷(1- 実効税率)

上記の例で、実効税率が30%の場合、利益目標は以下のようになります。

利標利益=(年間の借入金元本返済額300万円 ー 減価償却費100万円)÷ (1-税率0.3)≒ 285万円

漠然と「返済が始まると大変だ!」と不安に思うのではなく、具体的な数字に落とし込んで目標設定をし、利益確保の具体的な計画を立てましょう。

【利益確保とコスト見直し】
目標利益を算出したら、その目標を達成するための限界利益額のアップやコストの見直し金額の目標設定をすることができます。下記の図表で限界利益率のアップと固定費削減のヒントを掴みましょう。

2022年11月(令和4年11月)

インボイス(6)なぜインボイスが必要になる?

令和5年10月からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まります。
インボイス制度は、課税事業者にも免税事業者にも影響のある大きな制度改正です。
では、なぜインボイスが必要となるのでしょうか?

(1)買手の仕入税額控除にインボイスが必要
インボイスが始まると、原則として、買手は売手から受け取ったインボイスと一定事項が記載された帳簿を保存しなければ、仕入税額控除ができなくなります。
事業者が納付する消費税額は、事業者が売った時に買手から受け取った消費税額から、買った時に取引先等に支払った消費税額を控除して計算します。

◆消費税の納付額の計算方法
納付する消費税額 = 売った時に受け取った消費税額(売上税額)- 買った時に支払った消費税額(仕入税額)

インボイスは、売手が買手に対して正確な消費税率や消費税額を伝える手段となります。また、インボイスは、登録を受けた事業者でなければ発行することができません。従って、きちんと対応しなければ得意先に迷惑がかかります。

(2)現行の方法はインボイス実施までの経過措置
現在も、請求書に10%と軽減税率8%の税率ごとに金額を記載しているのに、なぜ新たにインボイスが始まるのでしょうか?

令和元年10月に8%の軽減税率制度が実施され、複数税率となりました。
仕入税額のなかに、8%と10%のものが混在することになり、正しい消費税額を算出するために、商品ごとの価格と税率が記載された書類の保存が求められるようになりました。
インボイス制度は、複数税率に対応した仕入税額控除の方式です。
インボイス制度に移行するまでの経過措置として、現行の区分記載請求書等保存方式が導入されました。現行では、請求書等に「軽減税率の対象品目である旨」「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」の記載が追加されたのです。
そのような経緯を経て、令和5年10月1日からインボイス制度が導入されることになりました。

(3)登録を受けない課税事業者という選択もある
仕入税額控除のためにインボイスの保存が必要なのであれば、消費税を納税をしない消費者だけを顧客とする事業者はどうなるのでしょうか?

適格請求書発行事業者の登録を受けるかどうかは、事業者の任意となっています。
事業者がインボイスを発行するためには、登録を受ける必要があります。
適格請求書発行事業者は、販売する商品に軽減税率対象品目があるかどうかを問わず、買手から求められれば、インボイスを発行しなければなりません。

課税事業者の中には、取引先がインボイスを必要としない消費者や免税事業者、簡易課税制度を選択している課税事業者のみというケースもあります。
例えば、学習塾などです。買手となる生徒は消費者なので、インボイスを保存する必要がありません。そのため、売手は必ずしもインボイスを発行する必要はありません。

課税事業者であってもインボイスを発行する必要のない事業者が、適格請求書発行事業者になると、原則として次のような売り手側の義務が発生します。

【適格請求書発行事業者の義務】
1、インボイスを発行する
2、返品や値引などを行う場合に、返還インボイスを発行する
3、発行したインボイスに誤りがあった場合は、修正したインボイスを発行する
4、発行したインボイスの写しを保存する

このように、適格請求書発行事業者には一定の義務が課せられるため、インボイスを発行する必要のない課税事業者は、適格請求書発行事業者の登録を受けないという選択肢が考えられます。

ただし、登録を受けない課税事業者であっても、自社が仕入税額控除を行うためには、仕入先等からのインボイスを受け取って保存する必要があります。

【適格請求書発行事業者の登録を受けるかどうかの判断】
□ 買手がインボイスを必要とするかを検討する
 ・買手が、消費者、免税事業者または簡易課税制度を選択している課税事業者である場合は、インボイスを必要としない

□ 登録を受けた場合、受けない場合について検討する
 ・登録を受けると、登録を受けている間は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下となっても、課税事業者として申告が必要となる
 ・登録を受けない場合、インボイスを発行することができない
 ・登録を受けない場合、買手は経過措置の6年間は、仕入税額の一部を控除することが可能

□ 登録を受ける場合は、登録申請手続きをする

自己資本比率を高めるにはどうすればよい?

【自己資本比率とは
「自己資本」とは、貸借対照表の「純資産の部」の合計です。
「自己資本比率」とは、総資本に対する自己資本の割合のことです。

 自己資本比率(%)=  自己資本   × 100
                総資本

【なぜ自己資本比率が注目されるのか】
コロナ禍で売上が0になり困った企業も多いです。しかし、自己資本が潤沢な企業の場合、売上0の状態が数か月続いたとしても、内部留保した蓄え(自己資本)から社員の給与や家賃などを払い続けることができます。
「自己資本比率」は、企業が存続できるかどうかを見る尺度の一つですので、注目されています。

【他人資本と自己資本】
貸借対照表の負債(他人資本)と純資産(自己資本)は、資金をどこから調達したかを表しています。返済不要な自己資本の割合が大きいほど、企業の健全性が高いといえます。

他人資本:企業外部から調達した資金で、返済・支払が必要
     例)銀行からの借入金、仕入先への買掛金など

自己資本:企業が自ら調達した資金で、返済が不要
     例)資本金、利益剰余金など

(1)自己資本>他人資本 の場合
主に株主からの資本金や利益の蓄積(利益剰余金)から資金調達しているため、健全性が高くなります。

(2)自己資本<他人資本 の場合
主に借入金など外部から資金調達しているため、健全性は低くなります。

【どうすれば自己資本比率を高められる?】
自己資本比率を高めるには、以下のような方法が考えられます。
 ・余裕資金による借入金の返済
 ・遊休資産の売却による総資産の圧縮
 ・増資
 ・利益をきちんと確保する

自己資本比率を高めるには、付加価値を高める経営をすることが大前提となります。そのためには、絶え間なく商品の品質を高め、サービス提供の工夫を行うことが必要です。また、月次決算の精度を高め、業績管理をより確実なものとします。そして、コスト削減に努めて利益を出し、適正な税金を納めて内部留保することを継続していくしかありません。

優良企業の定義の一つに「自己資本比率30%以上」という条件があります。自己資本は、経済情勢が悪化したときに「企業を倒産から守る防波堤」となります。自己資本比率30%を目指して、当期純利益(利益剰余金)を蓄積させていきましょう。

2022年10月(令和4年10月)

付加価値を増やす経営を目指しましょう

【付加価値とは
「付加価値」とは、簡単にいうと「限界利益」(粗利)のことです。売上高から「変動費」を引いた金額が「付加価値」です。いわば、会社が創造した価値のことです。

【変動損益計算書とは】
売上の増減によって、増減する経費かどうかで、全ての経費を「変動費」と「固定費」に分けて表示した損益計算書のことです。

◆変動費 … 商品仕入原価や材料費など、売上高の増減によって変わる費用
◆固定費 … 人件費や地代家賃など、売上高の増減によって変わらない費用

通常の損益計算書のように法律で作成が義務付けられているものではありません。あくまでも、社内の業績管理に有効な様式として活用されています。

【損益計算書と変動損益計算書の違い】
(1)通常の損益計算書
製造原価に人件費などの固定費が含まれるため、売上総利益は売上高に比例しません。

(2)変動損益計算書
変動費は、売上高の増減により変わるため、売値や仕入値が変わらない限り、限界利益率は一定となります。つまり、限界利益は売上高に比例します。

(3)変動損益計算書のメリット
1.売上高の増減により限界利益の増減がすぐにわかる
売上高が10%増えれば、変動費・限界利益も10%増加します。よって、売上高の増減により限界利益がどれだけ増減するかが直ぐにわかります。

2.商品1個あたりの限界利益がすぐに掴める
商品1個あたりの限界利益は次の算式で求めることができます。

 商品1個あたりの限界利益 = 商品単価 - 商品1個あたりの変動費
              = 商品単価 × 限界利益率

商品をいくつ販売すれば、その商品によって限界利益をいくら稼げるのか、販売数量での試算が簡単にできます。

【なぜ付加価値を増やさなければならないのか?
社員に夢や希望を与えられる職場にするには、給与を増やし続ける必要があります。材料費などが高騰してもそれを実現させるには、付加価値を増加させる必要があります。付加価値の増加範囲内で人件費を増やせば、労働分配率の上昇は抑えられます。付加価値をたくさん稼ぎ、社員の給与水準も高く、結果として労働分配率が低く抑えられた会社にしていきたいものです。そのためには、変動損益計算書を積極的に活用し、付加価値を増やすために必要な販売価格や販売数量を検討しましょう。また、経費をコントロールするなど、自社の業績管理に役立てましょう。
 ※労働分配率:付加価値(限界利益)の中から人件費に配分した割合

2022年9月(令和4年9月)

原材料価格の高騰!どうする値上げ?

ウクライナ情勢に急速な円安が拍車をかけ、エネルギーや原材料の価格が高騰しています。
原価の上昇を価格に反映させるだけの値上げはやりにくいと感じている方も多いことでしょう。
客離れを防ぐ上手な値上げ方法はないのでしょうか。

【原価上昇のなか、価格競争で生き残ることは難しい
原価上昇が続くなか、価格を据え置いていれば、利益が出なくなってしまいます。しかし、競合他社の存在を考えると値上げは難しいものです。

価格競争から脱却する方法は大きく分けて2つあります。
(1)価値を維持して価格を半分にする
(2)価値を4倍にして価格を2倍にする

しかし、(1)には2つの問題があります。
1、価格を半分にして利益が出せるのか
2、コスト削減で価格を半分にできたとしても、やがて他社が追随してくる ⇒ 更なるコスト削減と値下げ ⇒ いずれ限界に達して利益が出なくなる

したがって、(2)価値を高めて価格を上げる為の「知恵比べ」で競争から抜け出さなければなりません。

【値上げのための4つの方法】
(1)値上げしやすい商品や取引先から値上げする
(2)基本形を値下げして、オプション化で客単価を上げる
(3)価格帯を増やす
(4)直販比率を増やす

(1)値上げしやすい商品や取引先から値上げする
あらゆる原材料が値上げされています。このような状況であれば、中国のロックダウン、ウクライナ問題、円安、海上運賃の上昇など、一般的に知られている理由を値上げ交渉の材料にすることができます。
値上げの際は、原材料だけでなく、燃料費、運賃など、値上がりしているもの全てを組み込みましょう。
また、値上げ交渉は、もし取引がなくなったとしても自社の経営に大きな影響を及ぼさない取引先から行いましょう。

(2)基本形を値下げして、オプション化で客単価を上げる
単純な値上げは得意先に反発される可能性があります。そこで、現在の商品の機能や品質を基本形だけに絞り込んだ「基本形」を値下げして提供するようにします。そして、これまで無料で提供していた附属品やサービスなどをオプション化し、付加商品として有料化します。
不要なものを取り除いて値下げすれば、それを好む取引先はそれで満足します。それでは足りない取引先はオプションを付けるでしょう。そうなれば客単価が上がり、利益を上げることができます。

(3)価格帯を増やす
単純な値上げではなく、価格帯を増やすことによって単価を上げる方法もあります。
例えば、現在2つの価格帯を設けている商材であれば、中間にもう1つの価格帯を設けることにより、真ん中の商品が売れるようになります。
単純な値上げと違い、すんなり受け入れてもらえるでしょう。
ただし、あまり価格帯を増やし過ぎると、顧客は選ぶのが億劫になり、買うのをやめることもあります。2段階を3段階にするくらいが良いでしょう。

(4)直販比率を増やす
卸売業者を通して販売している会社や、下請け体制の会社では、直接販売を増やすことで粗利益が増え、実質的な値上げの効果が出ます。
ホームページやSNS、Googleビジネスプロフィールなどを使って、経費がそれほどかからない新しい流通チャンネルの開拓に取り組んでみましょう。特に、YouTubeやTwitter、Facebookなどで、動画を使った情報発信が良いでしょう。

【イメージアップでブランド化する】
「良い物をより安く」が日本の常識です。一方、「良いものは高い」のも常識です。どちらの常識を基準に事業を組み立てるかで、貴社の事業の性格が決まります。
例えば、1本1,000円のワインと、10,000円のワインでは、品質のイメージが全く異なります。10,000円のワインと聞いただけで、人は勝手に高品質をイメージするからです。
つまり、イメージが上がれば、値段が高いのも当たり前になります。もっとも、価格に見合う価値を提供しなければならないのは言うまでもありません。これは、消費者対象のB to Cビジネスだけでなく、企業対象のB to Bビジネスでも同じです。

【イメージを上げる4つの方法】
(1)値上げする
(2)専門化する
(3)オンリーワン化する
(4)商品名を工夫する

イメージを上げるには、(1)値上げする以外にも、(2)専門化する、(3)オンリーワン化する、(4)商品名を工夫する、などの方法があります。これらを組み合わせれば、独自化や差別化ができ、全ての中小企業でブランディングが可能になります。既存の事業や商品を独自化、差別化することで、値上げや価格の見直しが可能になります。

2022年8月(令和4年8月)

電子取引データの保存(電子帳簿保存法)(3)保存方法

電子取引データを電子データとして保存するには、法令に定められた要件を満たす必要があります。電子帳簿保存法の要件を満たさないと、税務調査で指摘されたり、青色申告の承認が取り消されたりするなどの不利な結果を招く恐れがあります。今後の経理のデジタル化を見据え、電子取引データの保存体制をつくりましょう。

【電子取引データの保存要件
電子取引データの保存には、改ざん防止措置(真実性)、可視性、検索性、保存期間などの要件を満たす必要があります。

<電子取引データの主な保存要件>

1.改ざん防止措置(真実性)2.可視性・検索性3.保存期間
以下のいずれかを満たすこと
(1)タイムスタンプが付されたデータを受け取る、
又は自社が速やかにデータにタイムスタンプを付す。
(2)訂正削除履歴が残るシステム等を利用する。
(3)改ざん防止の事務処理規程を制定し遵守する。
以下の全てを満たすこと
(1)モニター・操作説明書等の備え付け
(2)日付、金額、取引先名で検索できるようにする。
法人:7年
(繰越欠損金がある場合は10年)
個人:5年

改ざん防止措置や可視性・検索性、保存期間という法令の要件を満たすには、専用の保存システムを利用するほうが経理業務の負担軽減やデジタル化を進める上でもメリットが大きいでしょう。
専用の保存システムを利用しない場合は、訂正削除が可能となるので、保存ルールを明確にし「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を整備して管理する必要があります。また、電子取引の増加とともに、業務が煩雑になる、保存期間中に記憶媒体を紛失するなどのリスクが大きくなります。

【電子取引データの保存が経理業務を変える
現状、紙のやり取りが多い企業では、電子取引データと紙の文書の保存について、社内ルールを見直す必要があるでしょう。今後、様々なものがデジタル化する社会を考えれば、単に電子取引データの保存というだけでなく、経理業務そのものが大きく変わる可能性があることを考慮しましょう。
例えば、取引先がペーパレス化・デジタル化対応を積極的に進めている場合、従来の紙による請求書の発行に変えて、電子請求書の発行を求められることもあります。
また、令和5年10月から消費税インボイス制度が始まると、自社が適格請求書発行事業者であれば、発行するインボイスについて、紙から電子インボイスへの変更など、請求書の発行方法について、取引先から見直しを求められる可能性もあります。

【更なるペーパレス化・デジタル化へ
請求書等の受け渡しを紙で行っている取引については、そのまま紙として保存すればよいのですが、スキャナ保存を選択して電子データとして保存することも可能です。電子帳簿保存法の改正により、スキャナ保存の手続きが大幅に緩和されたので、以前より導入しやすくなっています。

<緩和されたスキャナ保存の主な手続き>
(1)事前の税務署への承認申請が廃止
(2
)原本とスキャナ画像との同一性チェックの廃止
(3)タイムスタンプ付与期間を最長2カ月と概ね7営業日以内に統一

紙で受け取った書類をスキャナ保存することで、ペーパーレス化・デジタル化を図り、経理業務の効率化を更に進めることも可能です。
例えば、営業担当者が取引先から受け取った領収書や請求書をスマートフォンで適切に撮影した画像を経理に提出することで、紙の原本を廃棄することが可能となります。ただし、現行の消費税法では、仕入税額控除の要件として、原則「書面」での保存が必要です。なお、令和5年10月1日から改正消費税法が施行され、適格請求書(インボイス)の電子データによる仕入税額控除も可能になる予定です。
ペーパーレス化・デジタル化を進めると、出張やテレワークが多い場合などにも柔軟に対応できるようになるでしょう。

【インターネットバンキングは電子取引データ保存の対象?
インターネットバンキングの振込結果画面等が、電子取引データに該当するかどうかの質問を多く受けます。
JIIMA(公益社団法人日本文書情報マネジメント協会)発行の「電子取引 取引情報保存ガイドライン」では、インターネットバンキングはEDI(電子データ交換)取引に該当すると明記されています。従って、ネットバンキングシステムが電子帳簿保存法の保存要件を全て満たす場合を除いて、電子取引データとして保存の必要があります。
例えば、インターネットバンキングで振込みをした場合の振込結果画面は保存する必要があります。この場合、振込結果画面のPDFダウンロードデータのファイル名に、「日付・相手先・金額」を入力するなどの一定の方法によって検索性要件を満たす等の対応をして保存することになります。また、この方法では、訂正・削除が可能なので、「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」が必要です。
なお、紙の通帳がない場合には、入出金明細も同様に保存が必要になります。

電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(法人の例)
電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(個人事業者の例)

役員と会社の金銭等の貸し借り

中小企業では、役員と会社との間で、金銭や不動産の貸し借り、資産の売買などが行われることがよくあります。役員と会社は、法律上、別人格であるため、外部との取引と同様の手続きを踏んでおかないと、会社法上、法人税法上の問題が生じる恐れがあります。

【金銭消費貸借契約書を作成しましょう】
役員が会社に金銭を貸したり、反対に、役員が会社から金銭を借りるときには、たとえ同族会社のオーナー企業であっても、役員と会社は別人格であるため、「金銭消費貸借契約書」を作成しましょう。そして、貸借金額、貸借期間、利息、返済条件などの民法上の権利関係も明らかにしておきます。
また、取引の内容によっては、会社に損害が生じることを防止するため、株主総会や取締役会の承認決議を経て、議事録を作成しておきましょう。

【金銭の貸し借りでの注意点】
(1)役員が会社に金銭を貸す場合
役員が会社から利息を受け取らなくても、法人税法上は問題ありません。利息を受け取る場合は、役員の雑所得として所得税の課税対象となります。会社が役員に支払った適正な利息は、損金として処理することになります。適正な利息とは、以下の通りです。

<適正な利息>
1.金融機関など他者から借り入れた金銭を貸す場合、その借入金の利率を基に算定
2.貸付けを行った日の属する年に応じて法令の定める利率を基に算定

役員が受け取る利息が過大となった場合、適正な利息との格差部分は、役員に対する経済的利益の供与として役員給与と判断されます。
なお、役員から会社への金銭の貸付けは、その役員の相続が発生すると、相続財産となるので注意が必要です。
また、役員が会社に貸す貸付金額が運転資金程度であれば問題ないでしょうが、多額の場合、その資金を役員がどこから調達したのかが税務調査で問題視されることがあります。

<役員が会社から利息を受け取る場合>
・無利息の場合:原則として問題なし
・適正な利息より低い場合:原則として問題なし
・適正な利息より高い場合:高い部分が役員給与

(2)役員が会社から金銭を借りる場合
通常、役員が会社から金銭を借り入れることはそれほど多くはないでしょう。よくあるケースとして、会社の預金から現金を引出し、その使途が不明のまま引出額が多額になる場合があります。この場合、役員への貸付金と認定されるため注意が必要です。
例えば、役員への20万円の仮払いがあり、そのうち10万円しか精算されていないなどが積み重なって、未精算額が多額になるケースがあります。


【不動産の賃貸借での注意点】
役員と会社の間で、事務所や住宅などの賃貸借をする場合、「不動産賃貸借契約書」や株主総会等の議事録を作成し、家賃について明記しましょう。

(1)役員が会社に不動産を貸す場合
役員が所有する不動産を会社に貸すとき、その不動産が、実際に会社の業務のために使用されていなければなりません。
「不動産賃貸借契約書」や株主総会等の議事録には、事務所用、倉庫用などの用途や賃貸借の目的を明らかにしておきましょう。
会社が役員に支払う家賃が相場よりも低い金額や無償であっても、法人税法上は、原則として問題ありません。反対に、相場より高い場合、その高い部分は役員給与とされます。

<役員に支払う家賃の消費税>
会社が役員に支払った事務所家賃の消費税は、現状では仕入税額控除が可能です。令和5年10月1日からインボイス制度が始まると、免税事業者である役員への事務所家賃の支払いについては、消費税の仕入税額控除ができなくなります。
ただし、令和11年9月30日までは、免税事業者からの課税仕入について、仕入税額相当額の80%または50%を仕入税額とみなして控除できる経過措置があります。

[経過措置]
令和5年10月1日~令和 8年9月30日 :80%
令和8年10月1日~令和11年9月30日 :50%

(2)役員が会社から不動産を借りる場合
役員が会社所有の住宅を借りる場合、法人税法上は、役員住宅の家賃として、住宅の規模に応じた適正な家賃基準があります。
法人税法上の適正な家賃と比べて、役員の支払う家賃が低すぎる、あるいは無償である場合は、適正な家賃との差額が役員給与とされます。

【資産を売買するときの注意点】
役員と会社の間で不動産の売買を行う場合、株主総会等の決議や議事録の作成などの手続きが必要です。
税務調査いおいても、疑念を持たれやすいので、「不動産売買契約書」を作成し、登記も忘れないようにしましょう。
同族会社の場合、法人税法上、特有の規定があり、売買の目的が明確でないと、取引そのものが否認されることもあります。
売買価格についても注意が必要です。適正な価格よりも著しく低い価格での売買であれば、取引に合理性が認められないとされる可能性もあります。

(1)役員が会社から低額で購入した場合
時価との差額が役員給与とされます。また定期同額給与に該当しないため、会社は損金処理できない上、差額分は譲渡益として法人税が課税されることになります。

(2)役員が会社へ低額で譲渡した場合
役員は、譲渡価格が時価の1/2未満であれば、時価で譲渡したものとみなされ、所得税の問題が生じます。会社は、時価との差額が受贈益として法人税が課税されるため注意しましょう。

2022年7月(令和4年7月)

電子取引データの保存(電子帳簿保存法)(2)自社の電子取引を把握

電子取引データは、電子メールに添付された請求書や領収書等だけではありません。もれなく収集して保存するには、社内の業務フローを整備する必要があります。
電子取引データ保存への対応には、3つのステップがあります。
ステップ1.取引先との間で受け渡している電子取引データの把握(現状把握)
ステップ2.電子取引データの保存要件を満たしているかどうかの確認
ステップ3.電子取引データの保存をどのような方法・システムで行うかの確認

今回は、ステップ1の現状把握についてご説明いたします。

【取引先から受け取る全ての書類を確認する】
電子取引データには様々なものがあります。「電子取引は行っていない」と決めつけず、まずは自社で行われている電子取引を洗い出しましょう。それには、税法上保存すべき紙の書類と電子取引データの全てを把握する必要があります。事態調査するには、以下のように取引先ごとに紙と電子取引データの全ての書類等をリストアップしましょう。

<実態調査のリストアップ項目>
(1)取引先(どこから、またはどこへ)
(2)書類の種類(請求書、領収書、見積書など)
(3)受取部門・担当(保管部門・担当)
(4)受取方法(PDFや紙など)
(5)書類の枚数(ひと月当たりの保存容量や作業量の見積り)

リストアップは、「見積 ⇒ 受注 ⇒ 出荷指示 ⇒ 売上」「契約・発注 ⇒ 入荷・仕入 ⇒ 支払」など自社の商流に合わせて「自社が発行した書類等」「自社が受け取った書類等」に分けて確認しましょう。リストには、電子取引データだけでなく紙の取引もリストアップしておくと、将来ペーパーレス化を検討する際に役立ちます。

<電子取引の例>国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】より
(1) 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
(2) インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等の画面印刷(いわゆるハードコピー)を利用
(3) 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
(4) クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
(5) 特定の取引に係るEDIシステムを利用
(6) ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
(7) 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領

<電子取引の具体的確認事項>
□ ネットショップ(アマゾン、楽天、モノタロウ等)で会社の備品を購入し、領収書をPDFデータでダウンロードしている
□ 社員がアマゾン等で会社の備品を立替払いし、領収書を電子データで受け取っている
□ 複合機のFAX機能で見積書や請求書を受信し、書面に出力することなく電子データを保存している
□ 電子請求書や電子領収書を受け取っている
□ 電子メール(メール本文や添付ファイル)で請求書や領収書を受け取っている
□ DVDやフラッシュメモリで請求書や領収書のデータを受け取っている
□ ネットショップに出店し、自社の商品を顧客に販売している
□ 公共料金の請求書をインターネットで確認している
□ クレジットカードの利用明細をインターネットで入手している
□ 電子決済サービス(PayPay等)を利用している
□ 社員がネットで購入した旅費(JALやANA等)を立替払い精算している
□ 大手メーカーとの取引に専用のシステム(EDIシステム)を利用している
□ 運送会社の請求データをインターネットで入手している

<書類確認リストの例>

取引先書類の種類受領者受領方法月枚数取引内容紙 or 電子
A会社領収書経理部PDF30経費電子
B商事請求書製造部メール本文15仕入電子
C商店レシート社長20経費

【実態調査は全部門、全従業員を対象に】
実態調査は経理部門だけでなく、全部門、全役員・全従業員を対象にします。書類等の受け取りには、役員や従業員による立替払いの経費精算なども含まれているため、次の点に注意しましょう。

1.個人で利用しているメールアドレス
役員や従業員が個人のメールアドレスを利用して飛行機や新幹線のチケットをホームページ上で購入しているケースがあります。この場合、個人のメールアドレスからパスワードを入力してログインしないと、請求者や領収書がダウンロードできません。このようなケースでは、各人から電子データの形式で提出させる業務フローに見直す必要があります。

2.パスワードのかかった添付ファイル
電子メールでの請求書データにパスワードがかかっているケースがあります。この場合、パスワードを解除して保存するか、パスワードのデータも一緒に保存するなど、閲覧可能な状態で保存する必要があります。また、電子メールに添付されたURLから請求書等を受け取るデースでは、ダウンロードの有効期限にも注意しましょう。

3.LINEやチャットの本文での取引
担当者同士が個人のLINEやチャットを使って、電子取引データをやり取りしているケースがあります。この場合、ダウンロードしたメッセージ履歴(ログ)、添付ファイルなどの電子取引データを担当者から提出してもらいます。履歴のダウンロード等ができない場合があるため、各ツールの仕様を確認しましょう。

4.内部牽制についての検討
個人のLINEやチャット、メールアドレス等を利用した電子取引は、不正や誤謬等の発生リスクが高くなります。この機会に、内部牽制を踏まえた社内規程の整備についても検討しましょう。


【自社発行の書類等についても確認しましょう】
電子データの保存は、自社発行する請求書や領収書等の控えなども保存対象です。代表例としては、取引先に電子メールで請求書等を送付しているケースがあります。自社が発行した電子取引データについては、電子データによる保存のルールを検討しましょう。

役員給与の注意点

役員給与の支給は、会社法上や税務上のルールがあるため、今一度、役員と会社との取引について問題がないかを確認しましょう。

【会社法と法人税法では役員は異なる】
会社法上の役員とは、取締役、監査役、会計参与等をいいます。これらの役員は、法人税法上も役員とされます。その給与は、定期同額給与や事前確定届出給与などとして、税法上の要件を満たすことで損金算入(費用とすること)が認められます。

法人税法では、役員の肩書がない人であっても、事実上、会社の経営に関与している人は役員とみなされます。例えば、会社法上の役員ではないが、会長、相談役、顧問などの肩書で経営に従事している人や、同族会社の従業員で一定の持株割合を超える株主であり、経営に従事している人などが該当します。

<法人税法上の役員の範囲>
●会社法上の法定の役員
・取締役
・会計参与
・監査役
・理事
・監事
・清算人

●税法固有の役員(みなし役員)
1.全ての法人に適用
法人の使用人以外の者(相談役、顧問など)で、実質的に法人の経営に従事している者
2.同族会社のみに適用
同族会社の使用人で、その同族会社の中心的な株主グループの一員であるなどの要件を満たし、実質的に法人の経営に従事している者

会社法上の役員でなくても、実質的に役員と同様の人を法人税法では、「みなし役員」として取り扱います。

【役員給与が決定したら議事録を作成】
役員給与は、株主総会において決定します。株主総会では、役員給与の総額の決議でよく、各役員の給与については取締役会や取締役間の協議等で決議することができます。役員給与が決定したら、株主総会や取締役会の議事録や支給決定通知書などの書類を作成しましょう。議事録は、税務上の証拠資料としてだけでなく、事業年度ごとに役員が意思を持って役員給与の額を決定し、その管理、統制を行うという意味でも重要な記録になります。

中小企業の場合、経営者自らが自身の役員給与を決めることになりがちです。自分の会社という意識から主観的に決定するのではなく、前年実績、当期の利益計画や業績見込みなどを基礎にして、経営の現状把握をしっかりとし、1年以内に返済する借入元本額を含めたキャッシュ・フローを確認した上で、役員給与を検討しましょう。

【定期同額給与と事前確定届出給与】
法人税法上、損金算入が認められる役員給与には、定期同額給与や事前確定届出給与などがあります

(1)定期同額給与
1ヵ月以下の一定期間ごとに同額で支給する給与で、役員ごとに個々に役員給与月額を定めます。原則として、事業年度の途中に支給額を改定することは認められません。ただし、期首から3ヵ月以内の改定であり、改定前の各支給時期の支給額が同額であり、改定後の各支給時期の支給額が同額であれば、定期同額給与とみなされます。
例外として、役員の職務内容の重大な変更、経営状況の著しい悪化などの理由で改定が認められる場合があります。ただし、一時的な資金繰りの悪化、単に業績目標に届かなかったなどは、「著しい悪化」には該当しないため注意が必要です。

<事業年度の途中で役員給与の減額改定が認められるケース>
1.銀行との間で借入金の返済期限延長等の条件変更をするため、役員給与を減額しなければならなくなった
 銀行との交渉に作成した返済計画、資金繰り表、条件変更契約書など減額の理由を明らかにすることで、役員給与の減額が認められる場合があります。

2.財務状況、資金繰りが悪化し、取引先との信用を維持・確保するため、経営改善計画に役員給与の減額を盛り込むことになった
 役員給与の減額により、財務状況、資金繰りに反映される効果を明らかにした上で、中長期的な経営改善計画になっていれば、減額が認められる場合があります。

(2)事前確定届出給与
役員に賞与を支給したいときなど、あらかじめ確定した支給日、支給額を定め、それに基づいて支給する給与等が事前確定届出給与です。その内容に関する届出を、所定の期日までに所轄税務署長に提出することが必要です。届出した支給日、支給額どおりに支給することで損金算入が認められます。

<事前確定届出給与の届出額と実際の支給額が異なる場合>
事前確定届出給与の税務署長への届出額と実際の支給額が異なる場合には、事前に支給額が確定していたとはいえない為、「事前確定届出給与」には該当しません。この場合、届出額より増額して支給していた時には、増額分だけでなく実際の支給額の全額が税務上損金不算入になります。また、届出額より減額して支給した時にも、同様に実際の支給額の全額が損金不算入となります。

【親族が役員の場合、勤務実態に注意】
社長の家族や親族へ役員給与を支給する場合、税務調査で勤務実態に照らして支給額が「不相当に高額」でないか、そもそも勤務実態があるかをチェックされます。そのため、勤務実態を説明できる資料等を残しておきましょう

<勤務実態を説明できる資料等>
・職務権限規程
・勤務日程表
・会社の組織図
・給与の支給方法と振込口座
・取締役会議事録

2022年6月(令和4年6月)

電子取引データの保存(電子帳簿保存法)(1)準備すべきこと

令和4年1月1日から、事業者が取引した電子取引データは、電子帳簿保存法上、電子データによる保存が義務化されました。宥恕(ゆうじょ)措置として、令和5年12月31日までは、印刷しての保存も認められています。この間に、電子取引データの保存体制を整備しましょう。なお、電子取引データの保存義務となるのは、法人税、申告所得税の納税者ですので、法人だけでなく、個人事業主も対象となります。

【電子データの保存とは?】
電子取引とは、取引先との間での取引情報を電子データで受け渡すことです。

<電子取引の例>
・インターネットによる請求書等の受け渡し
・ネット通販での購入
・電子メールによる見積りや発注
・キャッシュレス決済
・クレジットカードの利用明細をインターネットで確認
※詳しい例はこちらへ

このような電子取引に関する情報(電子取引データ)については、令和3年の電子帳簿保存法の改正により、印刷して保存する方法は認められなくなりました。言い換えれば、紙で受け取ったものは紙のまま保存してよいが、電子取引データで受け渡したものは、電子データのまま保存しなければならないということです。

【宥恕(ゆうじょ)措置期間中に電子データ保存に対応】
令和5年12月31日までは宥恕措置として、一定の要件のもと、電子取引データを印刷して保存する今までの方法も認められています。異例の宥恕措置が認められたのは、企業側から、経理の業務フロー変更やシステム対応が間に合わない、一部の書類しか対応できていないなどの声があったためです。

令和5年10月からは消費税のインボイス制度が始まります。そのため、請求書の発行や受領、経理の業務フローに変更が生じます。その対応も必要となるので、今から電子取引データの保存義務化の準備をしておく必要があります。

電子取引データの保存義務化への対応には時間がかかります。自社で実際に運用してみると、課題や問題点が出てくるため、それを改善しながら電子取引データの保存体制を整備し、それに慣れていく必要があります。

【電子取引データの保存義務化の背景 】
1.電子取引データの証拠能力を担保

なぜ、こんなに急いで電子保存の義務化に舵を切ったのでしょうか?経済社会のデジタル化が進むにつれ、取引情報を電子データで受け渡すケースが急速に進みました。しかし、電子取引データとその出力書面との同一性(証拠能力)を十分に確認できないという問題が生じていました。そのため、出力書面の保存措置を廃止し、電子取引データ自体の保存を義務付けることになりました。

2.今後の税務行政は電子が標準に
社会全体のデジタル化が進む中、国税庁も申告・届出、納税、相談業務などのあらゆる税務手続が税務署に足を運ばなくてもできるように、税務行政全体の電子化を進めています。

3.経理のデジタル化は必須
中小企業の中には、まだまだ電子取引が少ないところも多いと思われます。しかし、中小企業においても、請求書や領収書等をインターネットで受け渡すケースが増えてきています。今後、キャッシュレス決済の普及とともに、請求書や領収書等のペーパーレス化が更に進むことが予想されます。また、取引先から請求書等を電子化する旨の通知を受けた場合、それを拒絶できるケースは少ないでしょう。

令和5年10月から消費税のインボイス制度が始まると、帳簿及びインボイスの保存期間は7年間とされます。電子取引データで受け取ったインボイスを長期保存する体制も考慮する必要があります。

今から電子取引データの保存体制を準備しておくことは、インボイスの保存への対応にもつながり、経理のペーパーレス化・デジタル化による生産性向上にもつながります。経理体制やシステムの見直しとその準備には時間がかかります。今から電子取引データの保存体制の整備に取り掛かりましょう。

【宥恕措置の間にやるべきことは?】
宥恕措置は、あくまでも運用上の配慮であるため、令和6年1月からは電子取引データを印刷して保存することが一切認められなくなります。
令和4年は、電子取引データを電子データ保存するための準備期間として、自社の電子取引を洗い出し、その保存方法や電子保存システムの検討をしましょう。
次に、経理の業務フローを改善し、令和6年1月を安心して迎えられるようにしましょう。

<電子取引データ保存のスケジュール例>

令和4年令和5年令和6年
準備期間業務フロー改善・デジタル化電子取引データの電子保存
・電子取引の洗い出し
・電子取引データの保存方法の検討
・電子保存システムの検討
・インボイスを含む電子取引データの保存体制の整備
・運用と検証、改善
(1月)
・電子取引データの保存の完全義務化

新型コロナ貸付の返済にどう対応すればよいのか

新型コロナ貸付の実施から約2年が経過しました。措置期間が終わり返済が始まる企業が多くなってきます。返済開始後の財務状況をしっかりと把握し対処していきましょう。

【借入の一本化で返済額を軽減】
新型コロナ貸付の返済が始まると、これまで以上に返済額が多くなります。当然ですが、その分の資金を確保する必要があります。
まずは、現在の利益からどれだけ返済に回せるかを検討し、利益確保が難しければ固定費の削減などの改善が必要となります。借入額が多ければ、借入の一本化を行い、月々の返済額の軽減を図ること検討しましょう。

経済産業省が発表した「中小企業活性化パッケージ」では、コロナ資金繰りの支援継続が盛り込まれ、実質無利子・無担保融資の申し込みが2022年6月末まで延長されました。また、運転資金の借入期間がが15年から20年に延長されました。

日本政策金融公庫の融資であれば、借入の一本化を申し込むことができます。借入の一本化により、毎月の返済額を抑えることが可能になります。しかし、毎月の返済額が軽減できても、借入期間の長期化で利息の負担は大きくなります。長期的な目線で検討することが必要です。

また、借入の種類によっては一本化できない場合もあります。自社の借入が一本化できるかどうか、金融機関に相談してみましょう。なお、民間金融機関の借入一本化については、各金融機関に確認しましょう。毎月の返済額については、一本化後でも利益が十分に確保できる金額に設定しましょう。

<借入一本化の例>

現状借入一本化後
借入:500万円
借入期間:5年
計3本
毎月返済額:252,000円
借入:1,500万円
借入期間:20年
計1本
毎月返済額:62,000円

【借入一本化後も新たな借入はできるのか】
今後、融資が必要な時、借入一本化後も新たな借入はできるのでしょうか。もちろん借入ができないというわけではありません。売上増加を図るための新規開拓などの改善計画を策定する際、どうしても資金が必要になります。その場合は、金融機関に、新規借入を織り込んでも返済原資の確保が見込まれることがわかる資料を添えて説明しましょう。

2022年5月(令和4年5月)

パートの社会保険の適用拡大(令和4年10月~)

令和4年度は、パートの社会保険の適用について見直しが行われます。

(1)令和4年10月から従業員100人超が対象
パートやアルバイト従業員は、原則として年収130万円未満であれば、社会保険の加入義務がありません。つまり、サラリーマン家庭の場合、年収130万円未満であれば、社会保険は配偶者の扶養に入れることになります。
ただし、従業員が500人超の企業では、月額賃金が88,000円以上など、以下の条件を全て満たしたパートやアルバイト従業員は、社会保険の加入が義務付けられています。

<社会保険加入の条件>1~4の全てに該当する人
1.週の所定労働時間が20時間以上
2.月額賃金が88,000円以上
3.雇用期間が2ヵ月以上の見込み
4.学生ではない

社会保険の加入義務となる企業規模は、現在は従業員数が500人超ですが、令和4年10月からは従業員数が100人超に引き下げられます。
また、令和6年10月からは従業員数50人超と更に引き下げられることが決定しています。

<社会保険の加入義務対象の企業規模>
令和4年9月まで:従業員数500人超
令和4年10月から:従業員数100人超
令和6年10月から:従業員数50人超

社会保険の加入義務となる従業員数のカウントは、「現在の厚生年金保険適用対象者」によります。具体的には、以下のように計算されます。原則として、従業員数の基準を常時上回る場合に適用対象になります。

<社会保険の適用対象者数>
フルタイムの従業員数+週労働時間 及び 月労働日数がフルタイムの3/4以上の従業員数

企業に在籍している従業員数ではありませんので、自社の「現在の厚生年金保険の適用対象者数」を確認しておきましょう。

(2)パートの働き方に影響が
社会保険の適用対象になると、企業とパートやアルバイト従業員の両方に社会保険料の負担が生じます。
現在、年収130万円未満(いわゆる130万円の壁)に調整している場合、次のように働き方が変わってくることが予想されます。

1.労働時間を減らして社会保険の扶養の範囲内(106万円の壁)におさえる
企業とパートやアルバイト従業員に社会保険料の負担は発生しません。しかし、パートやアルバイト従業員の手取り収入が減ることになります。
パートやアルバイト従業員の労働時間が減少するため、企業は新たな労働力の確保とシフトの見直しが必要になります。

2.社会保険に加入するならば労働時間を増やして手取り収入を増やす
企業とパートやアルバイト従業員に社会保険料の負担が発生します。
企業は、労働時間が増えることで、シフトの見直しが必要になります。また、社会保険料の負担が増加するので、経費の増加となります。
パートやアルバイト従業員は、手取り収入が増える働き方に変わります。

制度改正について、パートやアルバイト従業員に説明し、今後の働き方について希望を確認しておきましょう。

適時・正確な記帳が重要な理由

令和4年度税制改正では、帳簿(仕訳帳、現金出納帳など)に関する罰則等の強化が行われました。また、補助金や助成金の申請においても、経年との売上高比較によるなど、適時・正確に記帳された帳簿の重要性が増しています。

【会計帳簿の2つの役割】
会計帳簿には、本質的な役割が2つあります。
<会計帳簿の役割>
1.経営者への自己報告機能
2.証拠力の確保

1つは、経営者への自己報告機能です。つまり、経営者自身の通知表、経営診断書なのです。財産や借入の現状、売上や利益、資金繰りといった経営の成績がわかります。経営者が経営判断を見誤らないために、いつも最新の状況を把握しておくには、日々の記帳が大切です。

2つ目は、証拠力が確保されることです。タイムリーかつ正確に記帳された帳簿は、証拠力が高いといえます。他人任せやまとめての記帳では、漏れや間違いが起こりやすくなります。現金出納帳は毎日記帳し、売上や経費もその都度記帳すれば、間違いにも早く気づき、信頼性も高くなります。刑事訴訟法でも、日々の業務過程で作成された商業帳簿には証拠能力を認めています。

【適時の記帳は会社を守る】
かつて帳簿といえば紙で綴った帳面でした。間違った記載をしたときは、その原始記録を消去することなく、そのまま記録に残し、その上で訂正記入を加える「見え消し」(赤の二重線を引き、その上に正しい数字を記載する等)をすることで、帳簿の証拠力を維持してきました。

また、記帳の基になる領収書や請求書などの取引の証拠書類を証憑といいますが、「証憑なくして記帳なし」という言葉がある通り、証拠書類に基づいて記帳することが大切です。これは、証憑が電子データ化されても同様です。

現在のように会計システムを使用して記帳するときも同様で、月次で締めた後は、遡って訂正できない仕組みになっていたり、訂正の痕跡が残るようになっていたりするシステムは信頼性が高いです。その証拠力は、いざというときに会社を守り、税務当局や金融機関など社外からの信頼につながります。

【帳簿がない場合のペナルティーは?】
事業者が保存すべき会計帳簿、請求書等の書類や電子データを保存していないと、青色申告取消の要因になります。青色申告の取消となると、特別償却や税額控除といった有利な制度の適用や、欠損金の繰越控除ができなくなります。そうなると税負担が大きくなることが予想されます。

令和4年度の税制改正では、帳簿を提出しなかったり、売上をごまかしたりした際のペナルティー(加算税等)をこれまで以上に重くする改正が行われました。
税務調査後の修正申告や期限後申告をした場合、通常の申告によって納める税金のほかに加算される過少申告加算税や無申告加算税について、以下の事由に該当する場合はペナルティーが加算されます。

事由加算されるペナルティー

税務署職員に帳簿の提示・提出をしなかった場合

10%
提示・提出した帳簿に、売上金額または収入金額の1/2以上が記載されていない場合10%

提示・提出した帳簿に、売上金額または収入金額の1/3以上が記載されていない場合

5%

2022年4月(令和4年4月)

中小企業の賃上げ税制(令和4年度税制改正)

令和4年度税制改正では、企業の積極的な賃上げを促すため賃上げ税制を強化しています。税額控除率の上乗せ要件が緩和され、最大40%に拡充されます。また、赤字や業況の良くない企業には、ものづくり補助金や持続化補助金の特別枠などが設けられます。

【1】なぜ今、賃上げ?
政府が、賃上げ税制を強化するのは、企業の内部留保が9年連続で過去最高を更新しているのが背景にあります。一方、賃金はほぼ横ばいの状態が続いているのが現状です。
賃上げにより、GDP(国内総生産)の半分以上を占める個人消費を伸ばすことで、企業の利益が拡大し、それがまた賃金として還元される「成長と分配の好循環を生み出す」という狙いがあります。

【2】中小企業の賃上げ税制のポイント
適用期限が1年延長され、これまでの賃上げ要件である(1)雇用者全体の給与総額を前年比1.5%以上増加をそのままに、新たに前年比2.5%以上増加させた場合、税額控除率が30%となる要件(2)が追加されました。税額控除率の上乗せ要件も見直され、(3)教育訓練費を前年度比10%以上の増加で税額控除率は10%上乗せとなり、最大40%になります。

<賃上げ税制の要件>


要件
改正前(1)雇用者全体の給与総額:前年度比1.5%以上増加:給与増加額の15%を税額控除
★下記の要件を満たせば税額控除率:25%
(2)雇用者全体の給与総額:前年度比2.5%以上増加
 かつ
(3)教育訓練費の増加等
 ※次のいづれかの要件を満たすこと
 A.教育訓練費:前年度比10%以上増加
 B.中小企業等経営強化法の認定経営力向上計画における経営力向上の証明
改正後(1)雇用者全体の給与総額:前年度比1.5%以上増加:給与増加額の15%を税額控除
(2)雇用者全体の給与総額:前年度比2.5%以上増加:給与増加額の30%を税額控除
★教育訓練費の増加等による上乗せ要件
(3)教育訓練費:前年度比10%以上増加:税額控除率を10%上乗せ
 ※(2)前年度比2.5%以上の賃上げのみでも税額控除率は30%になります。更に(3)教育訓練費の増加により税額控除率が10%上乗せされ最大40%になります。また、(2)前年度比2.5%以上の賃上げには未達でも、(1)前年度比1.5%以上の賃上げを達成し(3)教育訓練費を前年度比10%以上増加させていれば、税額控除率が上乗せされ25%になります。

雇用者には、既存の従業員(パート・アルバイト等を含む)だけでなく、新規採用の従業員も含まれます。
給与増加額(賞与含む)は、適用年度の雇用者給与等支給額から前年度の雇用者給与等支給額を引いた金額です。
上記の改正は、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

【3】税制の恩恵を受けられない企業は?
赤字など業況が厳しい中でも、賃上げ等に取り組む中小企業向けに、補助金の特別枠が創設されます。

1.ものづくり補助金
ものづくり補助金(正式名:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)に、賃上げ等に取り組む赤字事業者を対象とした「回復型賃上げ・雇用拡大枠」が設けられます。

<回復型賃上げ・雇用拡大枠>
次の要件全てを満たす3~5年の事業計画を策定する必要があります。
(1)事業者全体の付加価値額を年率3%以上増加させること
(2)雇用者全体の給与総額を年率平均1.5%以上増加させること
(3)事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上引き上げること

<補助上限額と補助率>

申請類型補助上限額※1補助率
通常枠

750万円 

1,000万円 

1,250万円 

1/2
※2
回復賃上げ・雇用拡大枠

750万円 

1,000万円 

1,250万円 

2/3
デジタル枠

750万円 

1,000万円 

1,250万円 

2/3
グリーン枠

1,000万円 

1,500万円 
2,000万円 

2/3

※1 従業員規模により異なる
※2 小規模事業者・再生事業者は2/3


2.持続化補助金の特別枠の設定
小規模事業者が経営計画を作成して取り組む販路開拓や生産性向上に要する経費の一部を支援する「持続化補助金」に、「成長・分配強化枠」が設けられます。

<成長・分配強化枠>
事業場内最低賃金を地域別最低賃金より30円以上引き上げる事業者や事業規模を拡大させた事業者が対象です。

<補助上限額と補助率>

申請類型補助上限額補助率
通常枠

50万円 

2/3
成長・分配強化枠

200万円 

2/3 ※3
新陳代謝枠 ※1

200万円 

2/3
インボイス枠 ※2

100万円 

2/3

※1 創業や後継ぎ候補者の新たな取り組み
※2 インボイス発行事業者への転換
※3 一部の類型において赤字事業者は3/4

未回収の売掛金はどうすればよい?

売掛金の中に、長期にわたって未回収のままになっているものはないでしょうか。このような滞留債権は、消滅時効に注意しつつ、法的手段を含めた回収方法を検討し、貸倒れにならないように対応することが必要です。

【1】法的手段をとる前に取引先との交渉をしましょう
回収ができないからといって、すぐに法的手段を行使することはせず、まずは取引先へ訪問、電話をして、交渉を重ねましょう。そのうえで、次のような手続きを検討しましょう。

(1)取引先に買掛金がある場合は相殺
取引先に、売掛金と買掛金がある場合は、滞留している売掛金と買掛金を相殺して、支払いに充当するなどの対応が考えられます。これにより法的手段に至らずに済みます。

(2)相殺後も再度取引先と交渉
買掛金との相殺でも完済できなければ、残金の支払いについて協議する必要があります。
残金を一括で支払うのか、分割で支払うのかなど、取引先の状況を確認し、確実に支払うとの確約を得ることが大切です。この時の協議事項は文書にしておきましょう。
取引先と協議し、回収計画が確定したら改めて残金の請求書を発行しましょう。

【2】法的手段は最終手段
売掛金には消滅時効(5年間)があるため、放置しておくと債権が消滅してしまいます。
債権者に支払いを催告したり、債務を承認させる等の方法によって、時効期間の完成を遅らせたり、振り出しに戻す必要があります。これを時効の完成猶予・更新といいます。
再三の訪問や、電話を繰り返しても、取引先が支払いに応じてくれない場合、回収の最終手段として法的手段をとることも必要です。

(1)まずは内容証明郵便
法的手段をとる前に、催告書を配達証明付きの内容証明郵便で送付しましょう。内容証明郵便は取引先への強い意思表示になり、送付することで事態が進展する可能性もあります。
内容として「誰が誰に対して、どのような契約に基づくどのような債権を、いくら請求しているか」等のほか、「期限内に請求に応じない場合の措置」についても記載します。

<内容証明郵便>
いつ、どのような内容の手紙を出したのかを日本郵便株式会社が証明するものです。
発送は書留で、相手に配達されたことを証明する配達証明付きにします。
同じ文面のものを3通作成し、1通は郵便局、1通は取引先へ送付、1通は差出人が保管します。

(2)主な法的手段は2つ
主な法的手段として「少額訴訟」と「支払督促」があります。通常の訴訟に比べて手続が簡易で、訴訟費用も安く抑えられます。
相手が支払督促に対して異議申立て、少額訴訟に対して同意しない場合は、通常の訴訟に移行することになります。

<少額訴訟>
60万円以下の金銭の支払いを求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争を解決する手続です。和解による解決方法もありますが、話し合いによる解決の見込みがない場合は、原則としてその日のうちに判決が出されます。
判決は、一定の条件のもとに分割払い、支払猶予、訴え提起後の遅延損害金の支払免除などを命じることがあります。
 [特徴]
 ・原則として即日判決

<支払督促>
簡易裁判所の書記官が審査し支払いを命じる略式の手続です。相手方が異議を申し立てると通常の訴訟手続で審理されることになります。
相手方が支払督促を受け取ってから異議を申し立てず2週間を経過すると、申立人は30日以内に仮執行宣言の申立てをすることができます。仮執行宣言の申立てがあると、裁判所書記官がその内容を審査し、支払督促に仮執行宣言を付します。仮執行宣言が付されると、申立人は、直ちに強制執行手続をとることができます。申立人が30日以内に仮執行宣言の申立てをしなかった場合には、支払督促は効力を失います。
 [特徴]
 ・書類審査のみで行われる簡易な手続
 ・証拠の提出や裁判所に出向く必要がない
 ・通常の手数料の半額

【3】どうしても回収できない場合は貸倒損失の検討を
回収ができない状態が長期化する場合は、勘定科目を売掛金から長期滞留債権へ振り替えます。取引先に以下の事実が発生した場合は、貸倒損失として会計処理することを検討しましょう。

<貸倒れの要件>
(1)金銭債権が切り捨てられた場合
(法律上の貸倒れ)
会社更生法、民事再生法の適用等の法的手続により金銭債権が消滅した場合は、税務上、損金算入が認められます。

(2)金銭債権全額が回収不能となった場合(事実上の貸倒れ)
相手方の支払不能等により、金銭債権の全額を回収できないことが明らかになった場合は、税務上、損金経理を行うことで損金算入が認められます。

(3)一定期間取引停止後、弁済がない場合(形式上の貸倒れ)
継続的な取引による売掛債権で、取引停止後1年以上経過した場合、または、売掛債権より回収費用(旅費等)の方が上回る場合。この場合、税務上、備忘価額1円を除き損金経理を行うことで、損金算入が認められます。

2022年3月(令和4年3月)

令和4年度から改正される「成人年齢・年金・育休」等の影響は?

令和4年度は、成人年齢の引き下げ、年金、育児休業など多くの改正があります。
成人年齢の引き下げは、各種契約、相続税や贈与税に関係します。
年金、育児休業、介護休業の見直しは、企業経営や従業員の働き方に影響するので、確認しておきましょう。

【1】成人年齢が18歳に
成人年齢が20歳から18歳に引き下げられます。令和4年4月1日時点で18歳以上20歳未満の人(平成14年4月2日生まれから平成16年4月1日生まれまでの人)は成人となります。
これまで、20歳以上でなければ親の同意がないとできなかった契約が可能になります。

<18歳から可能になる契約の一例>
・携帯電話の購入
・アパートの賃貸契約
・自動車ローン契約
 等

相続税や贈与税では、結婚・子育て資金の一括贈与の特例など、適用年齢の基準が20歳の制度は、基準が18歳に引き下げられます。

なお、酒やたばこ、競輪や競馬などの公営競技の年齢制限は20歳のままです。

【2】年金制度の改正
(1)パートの社会保険の適用拡大

令和4年10月から、従業員が101人以上の企業で働くパートやアルバイトなどの短時間労働者の社会保険の加入が義務化されます。以下の条件を満たせば、厚生年金保険と健康保険に加入しなければなりません。

<社会保険加入の条件>1~4の全てに該当する人
1.週の所定労働時間が20時間以上
2.月額賃金が88,000円以上
3.雇用期間が2ヵ月以上の見込み
4.学生ではない

企業は、社会保険の加入者数が増えると社会保険料の負担が増えることになります。
パート従業員は手取り収入が減ることになります。パート従業員の中には、社会保険の加入対象にならないように労働時間を調整して働く人もいます。社会保険に加入するならば、労働時間を今より長く働きたい人もいます。制度改正について従業員に説明すると共に、パート従業員の今後の働き方の希望を確認しておきましょう。

(2)在職中の年金受給の見直し
60歳~64歳に支給される「特別支給の老齢厚生年金」を対象とした、「在職老齢年金制度」の見直しが行われます。これまで、賃金と年金の月額合計が28万円を超えると、年金の全部または一部が支給停止となりました。令和4年4月からは、支給停止の基準が47万円に変更されます。

令和4年4月から、新たに「在職定時改訂」が導入されます。65歳以上の在職中の老齢厚生年金受給者の年金額を、毎年10月に改訂します。これまでは、65歳以降も働いて納めた保険料が年金額に反映されるのは70歳以降でした。これにより、65歳以降の就労継続を早期に年金額に反映されるようになります。

(3)年金の「繰り下げ受給」が75歳までに
繰り下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられます。これにより、年金の受給開始時期は、60歳から75歳の間で選択可能になります。

【3】育児・介護休業法の改正
男女ともに仕事と育児を両立できるように、令和4年4月以降、制度の改正があります。
出生時育児休業(産後パパ育休)の創設、雇用環境整備、育休取得の個別の周知・意向確認の義務化などの改正が3段階で行われます。

(1)雇用環境整備、個別の周知・意向確認の措置の義務化(令和4年4月1日施行)
◆育児休業を取得しやすい環境の整備
◆妊娠・出産(本人または配偶者)の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置

(2)有期雇用労働者の育児休業取得要件の緩和(令和4年4月1日施行)
育児休業の場合、従前の取得要件のうち、「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件が撤廃されます。取得要件は、「1歳6ヵ月までの間に契約が満了することが明らかでない」のみに緩和されます。

(3)出生時育児休業の創設、育児休業の分割取得(令和4年10月1日施行)
出生時育児休業(産後パパ育休)は、子の出生後8週間以内に、4週間まで取得可能です。また、原則として子が1歳(最長2歳)まで取得できる育休とは別に取得することが可能です。産後パパ育休、育休ともに、2回に分割しての取得が可能です。

インボイス(5)経理業務への影響は?

令和5年10月1日から消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートします。
インボイス制度の実施に向けて、請求書の様式変更、販売管理システムの設定変更、経費精算ルールの見直しなどの事前準備が必要です。また、インボイス制度のスタート後は、インボイスの記載内容の確認、消費税額の計算方法など、いくつかの注意点があります。

Q1.当社は「適格請求書発行事業者」の登録申請を済ませました。当社が発行する請求書の様式やシステムについて、何に注意すればよいですか?

A1.取引先に渡している請求書等(請求書、納品書、領収書など)を確認し、どの書類をインボイスにするのかを決めましょう。
例えば、現在使用している請求書(区分記載請求書)をインボイスにする場合、「事業者登録番号」や「税率ごとの消費税額等」などの記載項目を増やす必要があります。それに伴い、請求書の様式変更や、販売管理システム・請求書発行システムの設定変更をする必要があります。
様式変更後の請求書は、インボイス制度の開始前から使用することが可能です。請求書の在庫に合わせて切り替えましょう。

Q2.電子インボイスとは何ですか?

A2.国が推進する統一プラットフォームとしての電子インボイスとは、適格請求書の記載項目を電子データとして送受信する仕組みです。
電子データのため、請求書の送受信だけでなく、電子インボイスから仕訳の自動計上や支払管理・入金の消し込み等での活用が期待されています。
電子インボイスは、インボイス制度の開始と同様、令和5年10月からの開始が予定されています。

Q3.インボイス制度の開始後、請求書等を受け取る際、何を確認すれば良いですか?

A3.適格請求書発行事業者が発行したインボイスの保存がなければ、原則、仕入税額控除ができません。
会計ソフトへ入力する際、10%、軽減8%の税率別の入力のほか、「適格請求書発行事業者でない事業者からの仕入」を分けて入力する必要があります。登録番号の記載の有無の確認だけでは、仕入先が、適格請求書発行事業者かどうかはわかりません。国税庁のインボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトで確認する必要があります。
現行の区分記載請求書等保存方式では、請求書等に「軽減税率対象品目である旨」「税率区分ごとの合計額」の記載漏れがあった場合、受け取った側がその事実に基づいて追記することが認められていました。しかし、インボイス制度では、原則として、買手側による追記は認められていません。インボイスの記載内容に誤りがあれば、修正したインボイスの発行を取引先に依頼する必要があります。

Q4.インボイス制度で消費税額の計算が変わりますか?

A4.インボイス制度導入後も、売上税額の計算は従来通り「割戻し計算」(税込総額から消費税額を割り戻して計算する方法)が原則ですが、自社が発行したインボイスに記載された税額を積み上げて計算する「積上げ計算も」も認められます。
仕入税額の計算については、受け取ったインボイスに記載された消費税額を積み上げて計算する「積上げ計算」が原則ですが、従来通りの「割戻し計算」や「帳簿積上げ計算」も採用することができます。ただし、仕入税額の計算を「割戻し計算」にする場合は、売上税額の計算を「割戻し計算」する場合に限られます。

(1)売上にかかる税額の計算
原則 … 割戻し計算(税率ごとの税抜金額※ × それぞれの税率)※税込金額総額を税抜金額に割り戻した金額
特例 … 積上げ計算(インボイスに記載した消費税額等を積み上げて計算)※特例は、交付したインボイスまたは簡易インボイスの写しの保存が要件です。

(2)仕入にかかる税額の計算
原則 … 積上げ計算(インボイス等に記載された消費税額等を積み上げて計算)
特例1… 帳簿積上げ計算(税込金額から割り戻して計算した消費税額等を積み上げて計算※税率ごとに「切捨て」または「四捨五入」
特例2… 割戻し計算(税率ごとに集計した税抜金額に税率を乗じて計算)※特例2は、売上にかかる税額の計算において割戻し計算を適用している場合に限られます。

売上税額について「積上げ計算」を選択できるのは、適格請求書発行事業者に限られます。
売上税額を「積上げ計算」により計算する場合は、仕入税額も「積上げ計算」により計算しなければなりません。

Q5.社内の経費精算のルールについて見直しが必要とのことですが、なぜですか?

A5.従業員が、取引先に向かう途中、商店で手土産を買う、タクシーに乗る、居酒屋で接待するといった場合の経費精算について、それらの事業者が適格請求書発行事業者であるかどうかがポイントになります。
利用する商店やタクシー、飲食店がインボイスを発行する事業者かどうかを確認する必要があります。経理担当者だけでなく、営業担当をはじめ全従業員に、インボイス制度の説明、免税事業者からの仕入の注意点などを周知しましょう。そして、現状のルールのままで良いのか検討しましょう。

2022年2月(令和4年2月)

確定申告の準備をしましょう

令和3年分の所得税の確定申告が令和4年3月16日から始まります。
個人事業主や不動産オーナーだけでなく、経営者やサラリーマンでも一定の収入があれば確定申告が必要です。
また、還付を受ける場合も確定申告が必要です。

【個人事業主の確定申告の注意点】
(1)支援金、補助金、助成金等は収入として計上
行政から事業の為に受け取った補助金や新型コロナ関連の支援金等は、収入として計上する必要があります。計上漏れがないか確認しましょう。
主なものは以下の通りです。

<計上すべき支援金>
●緊急事態宣言・まん延防止等重点措置に伴い受給した一時支援金や月次支援金
●雇用安定助成金
●事業再構築補助金
●持続化給付金
●家賃支援給付金
●IT導入補助金
●ものづくり補助金

(2)家事消費は業務上の経費にならない
仕入代金、広告宣伝費、従業員給与、水道光熱費など、事業に必要な費用は業務上の経費となりますが、下記は家事消費となり業務上の経費として認められません。

<事業の経費とならないもの>
●自分や家族の生活費(家族と食事に行った費用など)
●娯楽のための費用
●医療費
●家族に支払う家賃や給与(青色事業専従者給与を除く)
●事業主自身の生命保険料(保険料控除の対象)
●自宅部分の火災保険料
●自宅の住宅ローンの利息

(3)家事関連費は合理的に按分する
店舗併用住宅の水道光熱費や地代家賃、事業と生活に利用する自動車の諸費用など、事業とプライベートの両方で使われている経費は家事関連費となります。
原則として、家事関連費は必要経費となりません。ただし、業務上必要な部分を明確にして合理的な方法で按分できれば、事業に必要な部分は必要経費になります。

<家事関連費の按分方法(例)>

家事関連費

按分方法

地代家賃
損害保険料
減価償却費
修繕費
固定資産税
火災保険料
住宅ローンの利息

◆面積

◆使用度合

◆使用時間

水道光熱費
電話代
インターネット接続料

◆使用時間

◆使用頻度

◆照明器具の数

事業と生活用に利用する自動車の保険料
自動車税
車検費用

◆運行記録から業務使用部分を明確化

【給与所得者の確定申告の注意点】
経営者(会社役員)やサラリーマンなどの給与所得者は、給与収入が年間2,000万円以下の場合、年末調整をすれば原則として確定申告をする必要はありません。ただし、以下のような給与収入以外の収入があると、確定申告が必要となる場合があります。

(1)役員と会社との取引によって得た収入
同族会社の役員が会社から受け取った収入は確定申告が必要です。

<確定申告の必要な収入>
●会社に賃貸している不動産の賃貸料
●会社から受け取った貸付金の利息収入


(2)満期保険金などの一時所得がある
以下のような一時所得がある場合、確定申告が必要な場合があります。
一時所得は、他の一時所得との合計額が年間50万円を超えない限り確定申告をする必要はありません。
また、給与所得の方は、給与以外の所得が年間20万円を超えない限りは確定申告は不要となります。
そのため、一時所得の合計額が90万円を超えない場合、確定申告は必要ありません。

<一時所得の計算>
 総収入-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)

<確定申告が必要な一時所得>
●保険料負担者が受け取る生命保険や損害保険の満期保険金(一時金)、解約返戻金
●ふるさと納税の返礼品(一般にふるさと納税額の30%程度が返礼品の額)
●懸賞や福引きの賞金品


(3)副収入がある
フリマアプリやネットオークションでの資産の売却、仮想通貨の売却による収入は、雑所得となります。
収入から仕入や経費を除いた所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
ただし、生活用の資産(古着や家財など)を売却して得た所得は非課税とされているので、確定申告は不要です。
また、貴金属や宝石、書画、骨とう品などで、1個または1組が30万円を超えるものを売却した場合の所得は、譲渡所得として確定申告が必要です。

(4)資産の売却による収入
不動産や金などの資産の売却による収入は、譲渡所得として確定申告が必要です。
また、譲渡所得から最高3,000万円の控除が受けられる特例を適用する場合や、マイホームの買い替え時の譲渡損失を給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)する場合には、確定申告が必要です。

(5)海外資産の運用による収入がある
日本国内の居住者が、海外の有価証券等の配当・利子、海外の不動産の賃料や売却などで得た収入は、日本と海外の両方で税金がかかります。
よって原則、日本での確定申告が必要です。

【確定申告により還付や所得控除が受けられる】
(1)医療費控除
医療費控除を受けるには確定申告が必要です。
医療費の領収書から作成した「医療費控除の明細書」を添付します。なお、領収書は5年間保存します。

(2)災害や盗難による損失
自然災害や火災による自宅や家財、自家用車への損害、盗難・横領などによる金品の損失などの損害は、確定申告で雑損控除が受けられる場合があります。

インボイス(4)免税事業者はインボイス制度へどう対応すればよいのか?

令和5年10月1日から消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートします。
買い手側はインボイス(適格請求書)等を保存しなければ、仕入税額控除ができなくなります。
インボイスは「適格請求書発行事業者」に登録した課税事業者のみが発行できるため、免税事業者には大きな影響があります。
今回は、インボイス制度にともなう免税事業者の留意点を見ていきます。

Q1.免税事業者にはインボイス制度のスタートでどんな影響がありますか?

A1.インボイス制度が始まると、買手側は売り手側が発行したインボイス等を保存しなければ、仕入税額控除ができなくなります。インボイスを発行できるのは「適格請求書発行事業者」に登録した課税事業者に限られるため、免税事業者はインボイスを発行できません。
買い手側から見ると、免税異業者からの仕入は、仕入税額控除ができなくなるので、消費税の負担が増えることを意味します。

Q2.取引先の消費税負担や今後の取引継続を考えると、免税事業者は課税事業者になった方がよいのでしょうか?

A2.まずは、取引先の意向を確認することが大事です。その上で、適格請求書発行事業者になる場合、消費税の申告、納税などの負担が生じるので慎重に判断する必要があります。
インボイスを発行できない場合、課税事業者の取引先から、消費税相当分の値引や「適格請求書発行事業者」への登録要請、取引自体の見直しなどが検討される可能性があります。
なお、以下のような事業者との取引の場合、免税事業者のままで「インボイスを発行しない」という選択も考えられます。
●インボイスを必要としない顧客と取引している事業者(例:小規模小売店、学習塾等)
●卸売市場に出荷し委託販売するケースなど、インボイスの発行が免除されている取引のみを行う事業者

いずれにしても重要なのは、慌てて「適格請求書発行事業者」の登録申請する必要はないということです。
今年1年をかけて、どのような対応がよいのか検討しましょう。

Q3.免税事業者が、「適格請求書発行事業者」になるにはどうすればいいですか?

A3.原則、「消費税課税事業者選択届出書」の提出が必要です。ただし、免税事業者が令和5年10月1日の属する課税期間中に「適格請求書発行事業者」の登録を受けた場合、登録を受けた日から課税事業者となる経過措置があります。
この措置の適用を受けた場合、「消費税課税事業者選択届出書」の提出がなくても、登録日から課税事業者となります。
例えば、個人事業主が令和5年3月31日までに「適格請求書発行事業者」への登録申請をし、令和5年10月1日に登録を受けた場合、令和5年10月1日から課税事業者としてインボイスの発行ができます。つまり、令和5年1月1日~9月30日までは免税事業者で、令和5年10月1日から課税事業者となります。なので、令和5年10月1日以降は、消費税の申告・納税が必要になります。

Q4.課税事業者となった場合、消費税の負担が軽くなる方法がありますか?

A4.課税事業者になっても、簡易課税制度を選択すれば、事務負担が小さくて済みます。免税事業者から課税事業者になる場合、簡易課税制度を選択する方が有利になるケースが多いと考えられます。課税方式の有利不利は一概には言えませんので、各社で判定する必要があります。

【簡易課税制度とは】
課税期間の基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合、課税仕入等の消費税額を「課税売上高×みなし仕入れ率」で計算する方式です。
簡易課税制度は、中小事業者の納税事務負担に配慮する観点から、事業者の選択により、売上げに係る消費税額を基礎として仕入れに係る消費税額を算出することができる制度です。

具体的には、その納税地の所轄税務署長に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者は、その基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)における課税売上高が5,000万円以下の課税期間について、売上げに係る消費税額に、事業の種類の区分(事業区分)に応じて定められたみなし仕入率を乗じて算出した金額を仕入れに係る消費税額として、売上げに係る消費税額から控除することになります。

免税事業者が経過措置の適用を受けて令和5年10月1日の属する課税期間に「適格請求書発行事業者」の登録を受け、登録を受けた日から課税事業者となる場合、その課税期間から簡易課税制度の適用を受ける旨を記載した届出書をその課税期間中に提出すれば、その課税期間から簡易課税制度を適用することができます。

例)免税事業者の個人事業主や12月決算法人が令和5年10月1日から登録を受ける場合で、令和5年12月決算期から簡易課税制度を適用するには、令和5年12月31日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出する必要があります。

<簡易課税の事業区分とみなし仕入れ率>

事業区分

業種

みなし仕入れ率

第1種事業卸売業90%
第2種事業小売業、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業に限る)80%
第3種事業農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業、電気業、ガス業、熱供給事業および水道業70%
第4種事業第1、2,3,5,6種事業以外の事業60%
第5種事業運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業に該当するものを除く)50%
第6種事業不動産業40%

2022年1月(令和4年1月)

電子取引の請求書や領収書は電子データでの保存が義務化

令和4年1月1日から電子帳簿保存法の改正により、電子取引にともなう請求書や領収書は電子データで保存することが義務化されました。
今までは、見積書や請求書、領収書等をメールなどの電子データで受領した場合、紙に出力して保存することが一般的でした。
これからは紙での保存だけでは認められなくなるので、電子取引に該当するケースを確認し、保存方法を徹底しましょう。

【電子取引とは】
電子取引とは、取引情報の受渡しを電磁的方式により行う取引のことです。電磁的方式とは、いわゆるEDI取引、インターネット等による取引、電子メールにより取引情報の受渡しをする取引(添付ファイルを含む)等のことです。
また、取引情報とは、取引において受領、交付する注文書、契約書、送り状、領収書、見積書、その他これらに準ずる書類に通常記載される事項のことです。
 ※EDI:電子データ交換(Electronic Data Interchange)

【義務化の時期】
電子帳簿保存法の改正は、令和4年1月1日から、電子取引を行う全ての事業者に適用されます。
事業年度に関係なく適用されるので、同一事業年度であっても、令和3年12月31日までに行う電子取引と、令和4年1月1日以後に行う電子取引では、取引情報の保存要件が異なります。
令和4年1月1日から電子データによる保存がされていない場合、青色申告の承認取消しの対象になる可能性があるので注意しましょう。

【具体的な電子取引】
自社では電子取引はしていないと思っている方でも、意外と色々な場面で電子取引が行われているケースがあります。自社に電子取引に該当するものがないかを確認しましょう。

<電子取引に該当するもの>
□ ネットショップ(アマゾン、楽天、モノタロウ等)で会社の備品を購入し、領収書をPDFデータでダウンロードしている
□ 社員がアマゾン等で会社の備品を立替払いし、領収書を電子データで受け取っている
□ 複合機のFAX機能で見積書や請求書を受信し、書面に出力することなく電子データを保存している
□ 電子請求書や電子領収書を受け取っている
□ 電子メール(メール本文や添付ファイル)で請求書や領収書を受け取っている
□ DVDやフラッシュメモリで請求書や領収書のデータを受け取っている
□ ネットショップに出店し、自社の商品を顧客に販売している
□ 公共料金の請求書をインターネットで確認している
□ クレジットカードの利用明細をインターネットで入手している
□ 電子決済サービス(PayPay等)を利用している
□ 社員がネットで購入した旅費(JALやANA等)を立替払い精算している
□ 大手メーカーとの取引に専用のシステム(EDIシステム)を利用している
□ 運送会社の請求データをインターネットで入手している

【電子取引データ保存の3要件】
電子メールで取引情報の受渡しを行った場合、取引情報が記載されている箇所によって保存する電子データが異なります。
 電子メール本文に取引情報が記載されているケース:電子メールそのものを保存
 電子メールの添付ファイルに取引情報が記載されているケース:添付ファイルを保存
電子データの保存する際、以下の3つの要件に準拠している必要があります。

<真実性の要件>
以下のいずれかで行う必要あり
(1)電子取引データの発信側がタイムスタンプを付与
(2)電子取引データの受信側が速やかにタイムスタンプを付与
(3)訂正削除履歴が残るシステムを活用
(4)訂正削除の防止に関する事務処理規程を定めて運用
  ※タイムスタンプ:ある時刻にその電子データが存在していたこと(存在証明)と、その時刻以降に改ざんされていないこと(非改ざん証明)をするもの。認定されたタイムスタンプ事業者(時刻認証業務認定事業者)により発行される。

<可視性の要件>
 ●保存場所に、パソコンやプリンタ等の備え付け
 ●電子計算器処理システムの概要書の備え付け(自社開発のプログラムを使用する場合に限る)

<検索性の要件>
次の要件を満たす検索機能を確保しておく必要あり(保存義務者が小規模な事業者でダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は検索機能は不要)
(1)取引年月日、取引金額、取引先を検索条件として設定
(2)日付または金額の項目は、範囲を指定して条件設定することができる
(3)2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて条件設定ができる
  ※ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は不要

【中小企業の対応】
電子データ保存の専用ソフトを使わない場合、次のような対応が考えられます。

(1)請求書データ(PDF)のファイル名に規則性をもって内容を表示する。
 例)2022年1月22日に㈱A商事から110,000円の請求書を受領した
  ⇒ 20220122_㈱A商事_110,000

(2)「取引先別」や「月別」など任意のフォルダに格納して保存する。
 例)上記の例の保存先 ⇒ 「202201」フォルダに格納

(3)「電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程」を作成し、備えつける。
  電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(サンプル法人)
  電子取引データの訂正及び削除の防止に関する事務処理規程(サンプル個人事業者)

なお、(1)の代わりに索引簿を作成し、索引簿を使用して請求書等のデータを日付、金額、取引先で検索できる方法によることも可能です。

電子データ保存の専用ソフトを使う場合は、メール等で受け取った請求書や領収書のPDF、画面ハードコピーなどの画像ファイル(JPG,PNG,BMPなど)を専用ソフトに読み込むことで、保存要件を満たした電子取引データとして保存できます。

詳しくは下記をご参照ください。
「電子帳簿保存法が改正されました」国税庁(R3.5 R3.12改訂)
「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】国税庁(R3.7)

インボイス制度(3)買い手側の留意点(仕入税額控除にはインボイスの保存が必要)

令和5年10月1日から消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)が始まります。
買い手側は原則として、売り手側から受領したインボイス(適格請求書)等および一定の事項が記載された帳簿を保存しなければ、仕入税額控除ができなくなります。今回は、インボイス制度にともなう買い手側の留意点を見ていきます。

Q1.インボイス制度のスタートで買い手側が気を付けるべきことは何でしょうか?

A1.インボイスを発行できない取引先から購入した場合、仕入税額控除ができません。インボイスを発行できるのは「適格請求書発行事業者」に登録した課税事業者に限られるため、取引先が「適格請求書発行事業者」かどうかを確認しましょう。
売り手側から受け取ったインボイス(請求書、領収書、納品書、レシート等)、簡易インボイス、自社で作成する帳簿について、一定の事項が記載されたものを保存しなければ、仕入税額控除の適用を受けることができなくなります。一定事項は以下をご確認ください。

【インボイスの(適格請求書)と簡易インボイス(適格簡易請求書)の記載事項】※一定の事項

インボイス(適格請求書)

簡易インボイス(適格簡易請求書)

(1)適格請求書発行事業者の氏名または名称 及び 登録番号
(2)取引年月日
(3)取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
(4)税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)及び 適用税率
(5)税率ごとに区分した消費税額等(端数処理は1請求書あたり、税率ごとに1回)
(6)書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

(1)適格請求書発行事業者の氏名または名称 及び 登録番号
(2)取引年月日
(3)取引内容(軽減税率の対象品目である旨)
(4)税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)
(5)税率ごとに区分した消費税額等はたは適用税率

Q2.取引先が免税事業者でインボイスを発行できない場合はどうなるのでしょうか?

A2.免税事業者や「適格請求書発行事業者」の登録をしていない課税事業者など、インボイスを発行できない取引先から購入した場合は、仕入税額控除の対象になりません。しかし、令和5年10月1日から令和11年9月30日までの6年間は経過措置が設けられています。
インボイス制度導入後、6年間(令和5年10月1日~令和11年9月30日)は、以下の要件を満たせば経過措置を適用することができます。
経過措置の間は、免税事業者からの購入でも仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できます。

【経過措置の適用要件】
●現行の区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存
●経過措置の適用を受ける旨(「80%控除・50%控除の特例を受ける課税仕入である」旨)を記載した帳簿の保存

【経過措置】

適用期間割合
令和5年10月1日~令和8年9月30日仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日~令和11年9月30日
仕入税額相当額の50%

Q3.店舗家賃の支払いを口座振替で行っており、請求書や領収書は貰っていないのですが、どうすればよいでしょうか?

A3.仕入税額控除を受ける為には原則としてインボイスの保存が必要です。インボイスは一定期間の取引をまとめて交付することもできるので、相手から一定期間の家賃についてのインボイスの発行を受け、それを保存することで対応可能です。
この場合、複数の書類でインボイスとしての必要事項を満たしていれば、書類全体でインボイスの要件をクリアできます。例えば、契約書にインボイスとしての必要事項の一部が記載されていて、実際に取引を行った事実を客観的に示す書類(通帳や銀行が発行した振込金受取書など)とともに保存することで、仕入税額控除の要件を満たすことが可能です。

Q4.取引先に直接問い合わせをせずに、取引先が適格請求書発行事業者かどうかを確認することはできますか?

A4.適格請求書発行事業者の名称・登録番号等は、国税庁「インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」に公表されているので、誰でも閲覧できます。

Q5.自動車整備工場を経営し、中古車の売買も手掛けています。中古車の買取相手(仕入先)は個人(消費者)のケースが多々あります。この場合、仕入税額控除はできないということでしょうか?

A5.古物営業を営む者(古物営業法上の許可を受けて、古物営業を営む古物商である)が、個人等の適格請求書発行事業者以外から、販売用の商品として買い取る場合は、インボイスがなくても一定事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
また、次のような事業者の取引についても、相手が適格請求書発行事業者でない場合は、一定事項が記載された帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。
 ・質屋による質者の購入
 ・宅地建物取引事業者による建物の購入
 ・再生資源および再生部品の購入
 など、購入者の棚卸資産に該当するものに限る。

Q6.営業担当社員が鉄道やバスを利用する場合も、インボイスの保存が必要でしょうか?

A6.3万円未満の交通費(公共交通機関を利用)であれば、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
帳簿には、通常の記載事項のほかに、「3万円未満の鉄道料金(またはバス料金)」である旨を記載します。
3万円以上の交通費の場合はインボイスの保存が必要です。

【帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる場合】
以下のような取引は、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
(1)インボイスの交付義務が免除される取引
 ・3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)による旅客の運送
 ・3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等
 ・郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ポストに差し出されたものに限る)
(2)簡易インボイスの記載事項(取引年月日を除く)を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引
(3)古物営業、質屋、宅地建物取引業を営む者が適格請求書発行事業者でない者から棚卸資産を購入する取引
(4)適格請求書発行事業者でない者から再生資源または再生部品(棚卸資産に限る)を購入する取引
(5)従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当、通勤手当等に係る課税仕入

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