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物価上昇や人手不足で賃上げの機運が高まる昨今では、労働分配率の管理は益々重要となっています。
生産性のアップや給与・勤務体系の柔軟化、利益分配のルールづくりなどにより、従業員にとって納得感のある給与体系の整備が可能になります。
また、賃上げの原資となる限界利益の確保は重要となっています。
【労働分配率を同業他社と比べてみましょう】
会社が稼ぎ出した限界利益は様々な用途に配分します。その重要な分配先である人件費が限界利益に占める割合を「労働分配率」といいます。
「労働分配率」は次の計算式で求められます。
労働分配率(%)= 人件費 ÷ 限界利益 × 100
人件費には、賃金、給与、賞与、役員報酬、法定福利費等が含まれます。
自社が稼いだ限界利益に対して、人件費がどれ位の割合なのかを確認してみましょう。
労働分配率は業種によって差があります。「TKC経営指標(BAST)」から業種ごとの黒字企業の平均値を確認しましょう。
【業種ごとの労働分配率(黒字企業の平均値)売上規模:全企業】
情報通信業:61.9%
製造業、宿泊業、飲食サービス業:54.1%
建設業:53.3%
運輸業・郵便業:51.9%
小売業:50.6%
卸売業:49.0%
農業・林業:38.9%
出典:「令和5年版 TKC経営指標(BAST)」
【「適切な労働分配率」はどう管理すればよい?】
役員報酬を含む人件費の原則は「労働分配率を抑えながら一人当たりの人件費を高く」することです。
人件費のうち役員報酬については、限界利益額に占める役員報酬総額の割合をあらかじめ決めておくと良いでしょう。
人件費を増やし過ぎれば赤字になる恐れもあります。そのため、自社に合った適切な労働分配率・給与水準を保つことは大切です。人件費に多くを割けない場合に納得感のある給与水準とするには以下のような策があります。
(1)年収の時給換算で生産性アップ
(2)柔軟な勤務・給与体系の設定
(3)利益を公平に分配するルールづくり
(1)年収の時給換算で生産性アップ
年収を、残業時間を含む年間労働時間で割って時給に換算してみると、適切な給与水準を考えるヒントになります。
例えば、年収500万円のとき年間労働時間が2,000時間なら、時給換算すると時給2,500円です。
同じ年収500万円でも、年間労働時間が2,500時間なら、時給2,000円になってしまいます。
同じ年収でも、業務の効率化等で労働時間が短くなれば、労働環境が良くなり、従業員にとってより納得感のある給与水準になります。
次の「生産性アップのポイント」を参考にし、自社に生産性アップの余地がないか検討してみましょう。
【生産性アップのポイント】
●工場レイアウトや生産の段取りの工夫で手持ち時間を減らせないか
●今日成し遂げるべきこと、今月得るべき成果が従業員ごとに明確になっているか
●業務日報や生産日報等で、業務の進捗管理を行っているか
●DXの推進等により業務の効率化を図る余地はないか
(2)柔軟な勤務・給与体系の設定
時期によって労働時間の差が大きい場合、変形労働時間制の導入で総労働時間を少なくできることがあります。
1年単位、1か月単位のほか、特定の業種(従業員30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業)では、1週間単位の非定型的変形労働時間制の採用が可能です。
また、一般的な「固定給+残業代+諸手当」以外に、歩合給や日当制等を取り入れ、柔軟な給与体系にすることも一案です。
業務の量や内容を勤務時間や給与へより細やかに反映することで、適切な労働分配率を維持することが可能になります。
(3)利益を公平に分配するルールづくり
適切な労働分配率を維持すると共に、利益を従業員に分配するルールづくりも大切です。
「給与体系を見直すポイント」を参考に、労働意欲の向上につながる給与体系の整備に取り組みましょう。
【給与体系を見直すポイント】
●仕事の難易度と担当者の人件費は見合っているか
●従業員一人ひとりの業績への貢献度を評価する明確な仕組みがあるか
●頑張った人とそうでない人とは処遇面で具体的にどんな差が出るか
●理想とする具体的な社員像と現実とのギャップを明確に伝えられるか
●財務や販売管理等のデータを人事考課に活用しているか
人件費の目安をつくり、分配のルールを定めることは、より安定的に会社を運営していくために欠かせません。
今後も人件費の増加が見込まれます。適切な水準で無理なく支払い続けるためにも、労働分配率の管理を行いましょう。
また、原資となる限界利益を増やす打ち手を検討しましょう。
インボイス制度が始まると、何をインボイスとして保存すればよいのか?従業員の旅費精算などインボイスが発行されない取引にはどう対応すればよいのか?など疑問が生じることがあります。実務における個別の対応を確認しましょう。
【免税事業者等から仕入れたとき】
Q1.インボイスを発行できない免税事業者等からの課税仕入であっても、令和5年10月1日~令和8年9月30日までは、消費税額の80%相当額の仕入税額控除を受けられるそうですが、どのように会計処理すればよいでしょうか?
A1.税抜経理の場合、仕入税額控除が受けられる80%相当額は、仮払消費税として処理し、20%相当額は、その金額を取引対価の額に含めることになります。
◆仕訳例(本則課税・税抜経理)
令和5年11月1日に免税事業者が営む国内の店舗で事務用品を購入し、11,000円を支払った。
備品消耗品費 10,200 / 現金 11,000
仮払消費税 800 /
※TKC財務会計システムでは、課税区分〔52〕〔62〕〔72〕で入力すれば自動計算されます。
なお、減価償却資産を購入した場合の少額減価償却資産の特例の判定や、交際費の範囲から一人当たり5,000円以下の飲食費を除外する場合の判定には、仕入税額控除が受けられない20%相当額を含めた金額で判定することになります。
この経過措置の適用を受けるには、以下の事項が必要です。
【経過措置の適用要件】
1.免税事業者等から区分記載請求書と同様の事項が記載された請求書等の保存
2.80%控除の特例を受ける課税仕入である旨を記載した帳簿(仕訳帳・元帳)の保存
【従業員の通勤手当・旅費交通費など】
Q2.従業員に支給する通勤手当は課税仕入として扱ってきましたが、従業員からインボイスをもらうことはできません。どうすればよいでしょうか?
A2.賃金規定等に基づいて従業員に支給した通勤手当(通勤に通常必要と認められる部分の金額)は、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
なお、「一定事項を記載した帳簿」とは、仕訳帳・元帳の摘要欄などに、以下の事項を記載したものが該当します。
【帳簿に記載する一定事項】
1.課税仕入の相手方の氏名又は名称
2.課税仕入を行った年月日
3.課税仕入に係る資産又は役務の内容
4.課税仕入に係る支払対価の額
5.課税仕入が通勤手当の支給に該当する旨 ※通勤手当を支給した従業員の住所の記載は不要
Q3.従業員の出張に伴う出張旅費、宿泊費、日当を支給する場合や、従業員による立替払いを精算する場合、インボイスはどうすればよいでしょうか?
A3.出張旅費等については、旅費規程等に基づいて支給するか、従業員による立替払いの精算かによって対応が異なります。
(1)旅費規程等に基づく実費相当額や日当を従業員に支給する場合
一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が受けられます。
(2)従業員の立替払いを精算する場合
原則として「会社宛てのインボイス」が必要になります。
「従業員宛てのインボイス」の場合は、この他に従業員が作成した「立替金精算書」等も必要になります。
※税込金額が3万円未満の場合は、公共交通機関特例の適用も可能
Q4.インボイスの保存が免除されている3万円未満の公共交通機関(電車・バス・船舶)の交通費(公共交通機関特例)について、気を付けることはありますか?
A4.「3万円未満」は、1回の取引の税込金額で判定します。
例えば、鉄道の乗車券を購入する際、片道3万円未満でも往復で購入して3万円以上だとインボイスが必要になります。あるいは、一人分は3万円未満でも、複数人分をまとめて購入して3万円以上であれば、インボイスが必要です。
なお、航空運賃やタクシー代、時間貸し駐車場の料金は、インボイスの保存が必要となるため注意してください。
Q5.従業員が、業務に必要な備品等を立替払いで購入した際、会社宛てではなく従業員宛てのインボイスを受け取りました。どうすればよいでしょうか?
A5.従業員宛てのインボイスと共に、従業員が作成した「立替金精算書」等を保存しておきます。
【賃貸借処理しているリース取引】
Q6.リース取引は賃貸借処理をしています。毎月計上するリース料について、インボイスの保存が必要でしょうか?
A6.令和5年10月1日以後のリース資産の引渡しの場合、リース会社(貸手)は、引き渡し時に売買処理を行い、当該リース取引の全額に対するインボイスを発行します。
借手は、引渡し時に受け取ったインボイスを保存することで、リース料を賃貸借処理する都度、仕入税額控除が認められます。
令和5年9月30日までのリース資産の引渡しの場合、リース会社(貸手)は引渡し時に売買処理を行い、当該リース取引の全額に対する請求書等(区分記載請求書等保存方式によるもの)を発行しています。借手は引渡し時に発行された請求書等を保存することで、リース料を賃貸借処理する都度、仕入税額控除が認められます。
インボイス制度開始の令和5年10月1日以後、会計処理に影響があるのが、売手負担の振込手数料・返品・値引きへの対応です。会計処理によっては、インボイスの発行や受け取りが必要になり事務負担が増える可能性があります。必要に応じて会計処理の見直しを検討しましょう。
【消費税の納税義務者は売手負担の振込手数料に注意!】
売上代金の決済時、商慣行として、取引先(買手)が振込手数料を差し引いた金額を振り込むことがあります。
この場合、売手が負担することになる振込手数料相当額を「雑費」や「支払手数料」(以下、「雑費」)として費用処理をするか、「売上値引き」として売上のマイナス処理を行うことが一般的です。
インボイス制度の開始により、売手負担の振込手数料を「雑費」とするか、「売上値引き」とするかによって売手の対応が異なります。
売手負担の振込手数料についてのインボイス制度による影響を確認し、今後どの会計処理にするかを検討しましょう。
<売手負担の振込手数料の3つの処理方法>
売手負担の振込手数料については、以下の3つの対応が考えられます。
1、「売上値引き」として処理する
2、「雑費」として処理する
3、「雑費」で会計処理し、消費税法上は「売上値引き」処理する
1、「売上値引き」として処理する
インボイス制度では、登録事業者は返品や値引き、割戻しなどの売上に係る対価の返還等について「返還インボイス」を発行する必要があります。
しかし、金額が税込1万円未満であれば、返還インボイスの発行は免除されます。
数百円の振込手数料は、返還インボイスの発行は不要となり、事務負担は軽減されます。
例)売掛金110,000円について、振込手数料550円が差し引かれて109,450円の振込入金があった。
普通預金 109,450 / 売掛金 110,000
売上値引戻り高 550 /
上記の仕訳の「売上値引戻り高」の課税区分は(課税売上に係る対価の返還)です。
2、「雑費」として処理する
売手負担の振込手数料を「雑費」として処理する場合、売上をマイナス処理しないため、売上集計表と帳簿上の売上が一致します。
従来は、「3万円未満の課税仕入」については、一定事項を記載した帳簿の保存のみで仕入れ税額控除が認められる特例措置があったため、数百円の振込手数料であれば、「雑費」として費用処理しても問題ありませんでした。
インボイス開始後は、この特例適用が廃止されるため、振込手数料について仕入れ税額控除の適用を受けるためには、原則として金融機関や取引先からインボイスを受け取る必要があります。したがって事務負担が増えることになります。
例)売掛金110,000円について、振込手数料550円が差し引かれて109,450円の振込入金があった。
普通預金 109,450 / 売掛金 110,000
雑費 550 /
上記の仕訳の「雑費」の課税区分は(課税仕入)です。
<特例措置>
一定規模以下の事業者※には、税込1万円未満の課税仕入については、帳簿のみの保存で仕入税額控除を認める特例措置(少額特例)があります。
売上規模が少額特例が適用される事業者であれば、事務負担に影響はでません。しかし、令和11年9月30日までの措置なので注意が必要です。
※基準期間における課税売上高が1億円以下、または、特定期間における課税売上高が5千万円以下の課税事業者
3、「雑費」で会計処理し、消費税法上「売上値引き」処理する
売手負担の振込手数料について、会計上は「雑費」として処理し、消費税法上は売上に係る対価の返還として「売上値引き」処理することも認められています。
この場合、振込手数料相当額について、売上のマイナス処理を行いません。また、返還インボイスの発行が免除されます。
例)売掛金110,000円について、振込手数料550円が差し引かれて109,450円の振込入金があった。
普通預金 109,450 / 売掛金 110,000
雑費 550 /
上記の仕訳の「雑費」の課税区分は(課税売上に係る対価の返還)です。
【実際に返品や値引きを行う場合は「返還インボイス」の発行が必要】
売上に対して、実際に返品や値引きを行う場合には、その金額が税込1万円以上であれば返還インボイスの発行が必要です。
例えば、売上金額に端数が生じた場合、請求書上、端数分を値引き処理することがあります。この場合、値引きした端数分についての税率・消費税額などを記載した返還インボイスの発行が必要です。インボイスと返還インボイスを1つの書類にまとめて記載することも可能です。
請求書発行後、取引先とのやり取りで、「代金振り込み時に3万円差し引いて振り込んでください」といった値引きのケースがあります。この場合、値引きした3万円部分について、税率・消費税額などを記載した返還インボイスの発行が必要になります。
【少額な返還インボイスは交付義務が免除】
適格請求書発行事業者が、返品や値引きなど、売上に係る対価の返還を行う場合、返還インボイスを交付する義務があります。
ただし、その金額が税込1万円未満の場合は、交付義務が免除されます。この措置には適用期限はありません。
売手負担の振込手数料の課税区分を「売上に係る対価の返還」として処理した場合、返還インボイスを発行する必要がなく、事務負担が軽減されます。
インボイス制度開始の令和5年10月1日以後、売手は原則として、買手からの求めに応じてインボイス(適格請求書)を発行しなければなりません。買手は、仕入れ税額控除のためにインボイスの保存が必要になります。取引や請求書等の発行が令和5年10月1日をまたぐケースにおいて、適切にインボイスの発行や保存ができるように業務フローを確認しておきましょう。
【9月30日までの取引の請求書等を10月1日以後に発行する場合】
インボイスの発行は、売手において課税資産の譲渡等(資産の引渡し、貸付け、役務の提供)を行った日が基準になります。10月1日をまたぐ取引の請求書等の発行については、「いつ課税資産の譲渡等が行われたか」が重要なポイントとなります。
1、請求の締日が月末のケース
売上の請求が「月末締め・翌月に請求書発行」のケースでは、9月30日までに行われた課税資産の譲渡等であれば、請求書等の発行が10月1日以後であっても、これまでの請求書(区分記載請求書)で問題ありません。
2、請求の締日が月末でないケース
請求の締日が月末でないケースがあります。例えば、20日締めで「9月21日~10月20日」のように、インボイス制度開始日の「10月1日」をまたぐ請求書等については注意が必要です。
売手は、10月1日~10月20日までの取引についてはインボイスを発行する必要があります。9月21日~9月30日までの取引については、これまでの請求書の発行が認められています。
請求書等の発行の際は、以下のような方策が考えられます。
(1)請求書を2枚に分ける
(2)1枚の請求書に期間を区切って記載する
ただし、買手側からすれば、10月1日前後の課税仕入がいずれも仕入税額控除の対象となります。そのため、インボイスの記載要件を満たす請求書等であれば、9月分と10月分で期間を区切らず1枚にまとめて発行することも可能です。
インボイス制度開始前からインボイスを発行しても問題ありません。準備ができた段階でインボイスに切り替えておくと良いでしょう。
3、売手と買手の売上・仕入の計上基準が異なるケース
売手が出荷基準、買手が検収基準など、売手と買手において売上・仕入の計上基準が異なるケースがあります。
例えば、売手が9月27日に出荷して課税売上とします。買手は10月3日に検収を行って課税仕入とします。このケースでは、売手は9月30日以前に課税資産の譲渡を行っているため、これまでの請求書等の発行を受けても、買手は仕入れ税額控除が可能です。
【9月30日までに支払う短期前払費用(家賃・保守点検料等)】
法人税法や所得税法では、継続適用を条件に、事務所家賃や保守点検料などを1年分前払いした費用の全額を、実際の支払時に短期前払費用として、または損金として必要経費処理することが認められています。
消費税法においても、法人税法等の経理において全額を短期前払費用として処理する場合には、その支払時点で課税仕入とすることができます。
例えば、9月30日に1年分の事務所家賃を前払いして、短期前払費用として処理した場合、貸手からこれまでの請求書等を受け取り、帳簿に所定の事項が記載してあれば、仕入れ税額控除の対象となります。
【適格請求書発行事業者を選択した免税事業者の場合】
免税事業者から適格請求書発行事業者になる場合、9月決算法人を除いて、同一事業年度内に免税事業者の期間と課税事業者の期間が存在することになります。免税事業者の期間である9月30日までの売上、仕入、売掛金、買掛金を集計して区分しておきます。
請求の締日が月末でない場合、9月30日までの請求と10月1日以後の請求は、分けて請求書等を発行しましょう。
令和5年10月1日から始まるインボイス制度では、本則課税事業者が仕入税額控除を適用するには、原則として取引先が発行したインボイスを保存する必要があります。取引先の事業者登録番号やインボイスになる書類(請求書や納品書等)の確認など、受け取るインボイスの対応状況を確認しましょう。
【仕入インボイスの対応】
取引先から受け取る仕入インボイスについて、制度開始直後は、記載内容に不備のあるインボイスを受け取る可能性もあります。
その場合、インボイスの記載内容についての責任は発行側にあり、受け取り側が追記・修正することは認められません。
取引先に、記載内容に不備のないように訂正して、再発行してもらわなければなりません。そうならないように、事前に取引先の協力を得て、対応を済ませておきましょう。
1、取引先から登録番号の通知を受ける
事前に取引先から登録番号(T+13桁の数字<法人の場合:T+法人番号>)の通知を受けて、国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」に登録番号を入力し、確認しておきましょう。
ただし、適格請求書発行事業者の登録申請から「適格請求書発行事業者公表サイト」に掲載されるまで数週間以上かかるため、検索時に掲載されていないこともあります。
また、登録番号を一度確認した後も、仕訳入力時に取引先が適格請求書発行事業者かどうか(失効、取消されていないかも含む)を再確認しましょう。
2、仕入インボイスの様式を確認する
一般的に、取引先との取引では、納品書、請求書、請求明細など複数の書類を受け取っているはずです。書類の名称に関わらず、インボイスに必要な記載事項が記載されている書類がインボイスとなります。取引先が発行するインボイスのサンプルを取り寄せ、事前に様式を確認しておきましょう。
3、経理処理への影響
どの書類がインボイスになるかにより、自社の経理処理に影響が及ぶことがあります。自社での経理処理を念頭におき、インボイスとなる書類について、取引先と検討することも必要になるかもしれません。
会計ソフトに入力する際は、仕入インボイスから「10%」「軽減税率8%」「免税事業者等からの仕入」を分けて入力する必要があります。
【取引先が免税事業者の場合は?】
1、取引先の登録状況を確認する
インボイスを発行できない免税事業者等からの仕入については、仕入税額控除ができなくなります。
小規模・個人事業者である取引先との取引(仕入・外注・不動産賃貸・サービス提供など)については、適格請求書発行事業者への登録状況の確認が必要です。
2、課税仕入に係る経過措置
仕入税額控除ができなくなると、その分、自社の納税額が増えることになります。
ただし、免税事業者等との取引への影響に配慮して経過措置が設けられています。
令和8年9月30日までは仕入税額相当額の80%、令和11年9月30日までは仕入税額相当額の50%を控除することができます。
<免税事業者等からの仕入税額控除可能額>
例)免税事業者からの課税仕入が110万円(うち仕入税額相当額10万円/税率10%)の場合
期間 | 経過措置の内容 | 仕入税額控除できる額 | 負担増となる消費税額 |
---|---|---|---|
令和5年9月30日まで | 全額が仕入税額控除できる | 10万円 | 負担なし |
令和5年10月1日~ 令和8年9月30日 | 仕入税額相当額の80%を仕入税額控除できる | 8万円 | 2万円 |
令和8年10月1日~ 令和11年9月30日 | 仕入税額相当額の50%を仕入税額控除できる | 5万円 | 5万円 |
令和11年10月1日~ | 仕入税額控除できない | 0円 | 10万円 |
3、取引条件を見直しする上での注意事項
免税事業者等である取引先に対して、適格請求書発行事業者への登録を要請することや、取引条件を見直すこと自体は、独占禁止法上は問題となりません。しかし、要請に応じない場合は、取引価格の引き下げや取引中止を一方的に通告する、あるいは仕入側の都合で著しく低い価格を設定するなどの行為を行うと、独占禁止法や下請法等に抵触する恐れがあるので注意しましょう。
<独占禁止法等により問題となる行為>具体例
●取引対価の引き下げ
仕入税額控除ができないことを理由に取引価格の引下げを要請し、再交渉において、双方納得の上で取引価格を設定すれば、取引価格が引き下げされたとしても問題はありません。しかし、再交渉が形式的なものにすぎず、仕入側の事業者(買手)の都合のみで著しく低い価格を設定し、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格を設定した場合は問題となります。
●商品・役務の成果物の受領拒否、返品
仕入先から商品を購入する契約をした後に、仕入先が免税事業者であることを理由に商品の受領を拒否、返品すること
●協賛金等の負担の要請等
取引価格の据置きを受け入れる代わりに、取引の相手方に別途、協賛金、販売促進費等の名目で金銭の負担を要請すること
●購入・利用強制
取引価格の据置きを受け入れる代わりに、当該取引に係る商品・役務以外の商品の購入・役務の利用を要請すること
●取引の停止
免税事業者に対して、免税事業者が負担していた消費税額も払えないような価格など著しく低い取引価格を一方的に設定し、不当に不利益を与えることとなる条件を提示し、その取引条件に応じない相手方との取引を停止した場合
●登録事業者となるような慫慂(しょうよう)等
1.課税事業者が、インボイスに対応するために、取引先の免税事業者に対し、課税事業者になるよう要請することがあります。このような要請を行うこと自体は、独占禁止法上問題となるものではありません。しかし、課税事業者になるよう要請することにとどまらず、課税事業者にならなければ、取引価格を引き下げるとか、それにも応じなければ取引を打ち切ることにするなどと一方的に通告することは、独占禁止法上又は下請法上、問題となるおそれがあります。
例えば、免税事業者が取引価格の維持を求めたにもかかわらず、取引価格を引き下げる理由を書面、電子メール等で免税事業者に回答することなく、取引価格を引き下げる場合は問題となります。
2.免税事業者が、当該要請に応じて課税事業者となるに際し、例えば、消費税の適正な転嫁分の取引価格への反映の必要性について、価格の交渉の場において明示的に協議することなく、従来どおりに取引価格を据え置く場合
詳細は、財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」をご参照ください。
令和5年10月1日からインボイス制度がスタートします。
自社で発行する請求書等のインボイスが、要件を満たしているか再度確認しましょう。
請求書やレシート等を発行するシステムの対応状況も確認しましょう。
【記載事項に漏れはありませんか?】
インボイスと簡易インボイス(レシート等)では必要な記載事項が異なります。
1、インボイスの場合
インボイス制度では、現在使用している請求書等の記載事項に加えて、新たに以下の記載が必要になります。
<新たに追加される記載事項>
●登録番号(「T」+13桁の数字)
●適用税率
●税率ごとに区分した消費税額等
2、簡易インボイスの場合
簡易インボイスは、小売業・飲食業・タクシー業・駐車場業など不特定多数の者に対して販売等を行う事業者が発行できるものです。
簡易インボイスとするレシートや領収書等を発行する場合は、現在の記載事項に加えて、新たに以下の記載が必要になります。
<新たに追加される記載事項>
●登録番号(「T」+13桁の数字)
●税率ごとに区分した消費税額等または適用税率(両方の記載も可)
レシート等を発行するレジシステム、食券販売機、時間貸し駐車場の料金精算機などのメーカーやリース会社に、インボイスに伴うメンテナンス状況を確認しましょう。
<インボイスと簡易インボイスの記載事項>
インボイス | 簡易インボイス |
---|---|
(1)適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号 (2)取引年月日 (3)取引内容(軽減税率の対象品目である旨) (4)税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込)及び適用税率 (5)税率ごとに区分した消費税額等 (6)書類の交付を受ける事業者の氏名または名称 | (1)適格請求書発行事業者の氏名または名称及び登録番号 (2)取引年月日 (3)取引内容(軽減税率の対象品目である旨) (4)税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜または税込) (5)税率ごとに区分した消費税額等または適用税率 |
※赤文字が新たに追加される記載事項
【インボイスの氏名・名称は屋号でもOK】
インボイス及び簡易インボイスには、氏名や名称の記載が必要です。名称については屋号や省略した名称などの記載が認められています。ただし、電話番号を記載するなどしてインボイスを発行する事業者が特定できることが必要です。
【1円未満の端数処理は1つのインボイスにつき1回のみ】
インボイスには、税率ごとに区分した消費税額等を記載する必要があります。1円未満の端数が生じた場合、端数処理は1つのインボイスにつき税率ごとに1回のみとなります。
端数処理の方法(切上げ、切捨て、四捨五入)は事業者の任意です。自社でどの端数処理方法にするかを決定し、決定した端数処理方法を徹底させてください。
インボイスの明細行に記載された個々の商品ごとに消費税額等を計算して1円未満の端数処理を行い、その合計額を消費税額等とすることはできません。
<端数処理方法>
【家賃等を口座振替で受け取る場合のインボイス対応】
不動産賃貸のように、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、売り手が請求書や領収書を発行しない取引であっても、買い手が仕入税額控除を受けるためには、原則としてインボイスの保存が必要です。
事務所・店舗等の家賃や月極駐車場代などを口座振替や口座振込によって受け取る場合、請求書や領収書を発行しないケースがあります。借主が仕入税額控除を受けるために、借主からインボイスの交付を求められる場合があります。このような場合、貸主側の対応として以下の方法が考えられます。
(1)一定期間の家賃について、まとめてインボイスを発行する
(2)登録番号、適用税率、消費税額等の記載事項を不動産賃貸契約書に記載する※
(3)令和5年9月30日以前からの契約については、登録番号など契約書に不足している記載事項を借主に通知する※
※借主が契約書等と共に通帳等の記録を保存することでインボイスの保存要件が満たされます。
インボイスに必要な記載事項は、1つの書類だけに全てを記載する必要はありません。複数の書類で記載事項を満たせば、それら複数の書類全体でインボイスとして取り扱うことができるとされています。
借主が、登録番号・税率・消費税額等が記載された契約書を受け取り、実際に取引を行った年月日の事実を示すもの(通帳や銀行が発行した振込金受取書)を保存することで、仕入税額控除の要件を満たすことになります。
【適格請求書発行事業者の登録申請は完了していますか?】
インボイス制度が開始される令和5年10月1日から「適格請求書発行事業者」となるための登録申請期限は令和9月30日です。
申請後、登録通知が届くまで数週間はかかるので、申請を9月30日にしたのでは業務に支障が出ます。未申請の方で10月1日からの登録を希望する方は早めに申請しましょう。
令和6年1月1日から、贈与税と相続税のルールが大きく変わります。
これまでの贈与・相続の計画を見直す必要が出てくる可能性があります。
【贈与税の2つの現行制度】
贈与税には2つの制度があります。
1つは「暦年課税制度」、もう1つは「相続時精算課税制度」です。現行の制度内容は以下のとおりです。
1、暦年課税制度
1年間に受けた贈与額が110万円を超えると贈与税がかかります。
贈与者が亡くなると、相続開始前3年間の贈与額は相続税の計算対象に含めます。
2、相続時精算課税制度
生前贈与への課税を相続時まで繰り延べる制度です。
原則60歳以上の父母・祖父母などから18歳以上の子・孫などへの贈与において選択が可能です。
選択した年分以降から適用され、一旦選択すると暦年課税制度に戻すことはできません。
選択後の贈与額は全て相続財産に加算されます。
上記の2つの制度が、令和6年1月1日から改正されます。
【令和5年度税制改正のポイント】
令和6年1月1日以後に受けた贈与について適用される改正は以下のとおりです。
1、暦年課税制度の改正ポイント
・贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間を、相続開始前3年間から7年間に延長(令和6年1月1日以後の贈与から7年分の加算対象)
・延長した4年間に受けた贈与のうち、総額100万円までは相続財産への加算なし
2、相続時精算課税制度の改正ポイント
・現行の暦年課税の基礎控除とは別途、110万円の基礎控除が創設された(控除した額は将来、相続税の課税対象にならない)
・相続時精算課税で贈与を受けた土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合、相続時にその課税価格を再計算できる
※図表:財務省 令和5年度税制改正 より抜粋
【相続時精算課税制度のメリット・デメリット】1.贈与時に基礎控除と特別控除が利用でき、贈与税は定率で課税される
贈与時に毎年110万円の基礎控除と、生涯の特別控除2,500万円が利用できる。
税率は、暦年課税と異なり、2,500万円超には一律20%の課税となる。
2.相続前に財産の帰属者を決められる
例えば、「長男には自宅を、長女にはアパートを残したい」などの希望を生前に実現することが可能です。
3.贈与することで収益の移転を図ることができる
賃貸アパートや有価証券そのものは相続税の課税対象となりますが、家賃収入や株式配当などにより増えた預貯金は受贈者に蓄積されるので、相続税の対象となりません。贈与の時期が早いほど効果があります。
4.値上がりが予想される財産を有利に贈与することができる
相続時精算課税の適用財産は、相続時ではなく贈与時の時価で相続税額が計算されます。
贈与時よりも相続時の時価が高くなることが予想されるような財産は、相続時精算課税で贈与すると将来の相続税負担が減ります。
(2)デメリット
1.暦年課税に戻すことができない
相続時精算課税を選択した場合、暦年課税に戻すことはできません。
2.小規模宅地等の特例の適用が受けられない
相続時精算課税で贈与により取得した宅地等は、相続時に小規模宅地等の特例を適用することができません。
3.受贈者が先に死亡した場合、相続税額が増える可能性がある
相続時精算課税を適用してた受贈者が特定贈与者(相続時精算課税で財産を贈与した人)より先に死亡した場合、受贈者の相続時精算課税の適用に伴う権利義務は、受贈者の相続人(配偶者や子など)に継承されます。そのため、受贈者の相続人が同じ不動産に対し、短期間に2回の相続税の納税を求められることもあります。
4.贈与財産の価値の下落・費消のリスクがある
相続時精算課税を利用して多額の贈与を行うと、将来の相続時にその贈与財産の価値が低下した場合や、費消されて残っていない場合でも、贈与時の価額で相続税が課税されます。
5.受贈財産は物納に使えない
不動産や有価証券などの財産を生前贈与を受けて、相続時精算課税を適用している場合、その財産は相続税の物納に充てることができません。
6.相続時精算課税で贈与を受ける孫には相続税の2割加算がある
孫が相続時精算課税を選択して祖父母から贈与を受けた場合は、祖父母の財産の相続または遺贈がなくとも、相続時精算課税の適用を受けた財産について相続税の納税義務が生じます。更に、この場合は、孫(代襲相続人である孫を除く)の納付すべき相続税額は2割加算されます。
【生前贈与の注意点】
(1)贈与とは
1.無償で財産をあげること
2.当事者が合意(もらう)した
この2要件があれば贈与が成立します。
一方、親や祖父母が、子や孫名義の預金口座へ資金を移動させても、管理・運用が親や祖父母のままだと贈与とは認められず、親・祖父母の名義財産とされます。
(2)R6.1.1~の生前贈与で注意すること
生前贈与の契約書を作成したり、記録を残すことが大切です。
将来相続税を算出する際、長期間さかのぼって贈与の記録を確認できるように準備をしておく必要があります。
また、民法による法定相続分を計算する場合は、生前贈与額(特別受益額)を加算して計算します。
多額の生前贈与で相続財産が減少し、一部の相続人に不平等となることを避けるためです。
財産を贈与する際は、民法の遺留分にも注意が必要です。
令和5年10月1日から始まる消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)では、適格請求書発行事業者が値引や返品等を行ったときには、原則として返還インボイス(適格返還請求書)を発行する必要があります。
ただし、令和5年度税制改正において、税込1万円未満であれば返還インボイスの発行が免除される改正が行われました。
【返還インボイスに記載すべき事項】
Q1.適格請求書発行事業者は、値引や返品の際にもインボイスを発行が必要なのでしょうか?
A1.値引等を行った際は、売手と買手の税率と税額の一致を図るため、原則として値引等の金額や消費税等を記載した返品伝票などの書類(返還インボイス)を発行しなければなりません。
ただし、3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)の運賃、3万円未満の自動販売機及び自動サービス機による商品の販売のように、インボイスの発行が免除される取引については、返還インボイスの発行も免除されます。
Q2.返還インボイスには、どのような事を記載すればよいですか?
A2.返還インボイスの記載事項は以下の通りです。
<返還インボイスの記載事項>
※対価の返還等の処理を合法的な方法により継続して行っていれば、「前月末日」や「最終販売年月日」をその取引を行った年月日として記載することも可能です。また、「〇月分」などの課税期間の範囲内で一定の期間の記載も可能です。
【少額な値引・返品は返還インボイスの発行を免除】
Q3.決済の際に、売手が負担する振込手数料を「売上値引」として処理しています。この場合、返還インボイスを発行する必要がありますか?
A3.令和5年度税制改正において、税込1万円未満の値引・返品・割戻しなどの売上に係る対価の返還等については、返還インボイスの発行が免除されることになりました(少額な返還インボイスの交付義務免除)。
振込手数料(税込1万円未満)を売上値引処理する場合は、返還インボイスの発行は不要です。
Q4.少額な返還インボイスの交付義務免除に適用要件はありますか?
A4.適用対象者の制限はありません。また、恒久的な措置のため適用期限はありません。
すべての適格請求書発行事業者が対象です。税込1万円未満の売上値引処理をする場合は返還インボイスは不要です。
Q5.売手が負担する振込手数料を「支払手数料」として処理していますが、交付義務免除の対象になりますか?
A5.売手が負担する振込手数料を「支払手数料」すなわち課税仕入として処理している場合は、そもそも返還インボイスを発行する必要がありません。
支払手数料として仕入税額控除を行うためには金融機関や取引先から支払手数料に係るインボイスを受け取って保存することが必要です。
ただし、一定規模以下の事業者においては、税込1万円未満の課税仕入について、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例(少額特例※)の対象になります。
※少額特例…対象者:基準期間の課税売上高が1億円以下 または 特定期間の課税売上高がが5千万円以下の課税事業者
対象期間:令和5年10月1日~令和11年9月30日
Q6.売手が負担する振込手数料について、会計上は「支払手数料」、消費税法上は売上に係る対価の返還等として処理することはできますか?
A6.振込手数料相当額について、会計上は支払手数料として処理していても、消費税法上は売上に係る対価の返還等として処理することが可能です。
この場合、振込手数料相当額が税込金額1万円未満であれば、返還インボイスの発行は不要です。
消費税法上、売上に係る対価の返還等として処理する場合は、その基となった適用税率(判然としない場合には合理的に区分)による必要があるほか、帳簿に対価の返還等に係る事項を記載し、保存する必要があります。
令和5年10月1日から消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートします。
現行の消費税法では、3万円未満の取引については帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例がありますが、インボイス制度開始後は、一部を除いて原則として認められなくなります。クレジットカードやコインパーキングなどの利用時には注意が必要です。
【カード会社がら発行される利用明細書はインボイスにはならない】
Q1.クレジットカード会社から毎月送られてくる「利用明細書」の保存で仕入税額控除は認められますか?
A1.インボイス制度では、「利用明細書」や「請求明細書」はインボイスとして認められません。
クレジットカード会社が利用状況をまとめた「利用明細書」や「請求明細書」は、カード利用者に対して事業者(店舗)が作成した書類でないため、請求書等に該当しません。これは、現行の消費税法においても請求書等に該当しません。
Q2.クレジットカード利用時は何をインボイスとして保存すればよいですか?
A2.買い物をした店舗等が適格請求書発行事業者であれば、店舗等が発行する「ご利用明細」「ご利用控」にインボイスに必要な記載項目が記載されているので、これを保存してください。
この「ご利用明細」等には以下の項目が記載されていることが一般的です。
そのような書類であれば、消費税法における請求書等に該当することになります。
Q3.これまで、店舗が発行する「ご利用明細」をきちんと保存していなかったかもですが大丈夫ですか?
A3.クレジットカード会社が発行する「利用明細書」や「請求明細書」は、消費税法上の請求書等には該当しませんが、現行では、税込3万円未満の取引の場合、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められているため、少額のクレジットカード取引については、「請求明細書」を保存することで問題とされなかったと思われます。
インボイス制度の開始後は、3万円未満の特例が廃止されるため、クレジットカードを利用する場合、店舗等が発行する「ご利用明細」や「ご利用控」を必ず受け取って保存することを徹底してください。
高速道路を利用する際、料金所でクレジットカード払いをする場合は、交付される「利用証明書」を保存しましょう。
ETCを利用する際、クレジットカード会社が発行する「ETCクレジットカード」を利用した場合は、Web上の「ETC利用照会サービス」にて簡易インボイスが電子データで交付される予定です。
Q4.コインパーキングの利用時は、どうすればよい?
A4.コインパーキングから発行されるレシート(簡易インボイスに該当するもの)を必ず保存してください。
インボイス制度では、3万円未満の自動販売機や自動サービス機からの商品の購入については、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められる特例があります。しかし、コインパーキングは対象外ですので、簡易インボイスが必要になります。
【一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置(少額特例)】
Q5.令和5年度税制改正で、少額の取引であればインボイスの保存がなくてもよくなったそうですが?
A5.中小事業者の事務負担に配慮して、一定規模以下の事業者については、1万円未満の課税仕入(経費等)であれば、インボイスの保存がなくても帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められることになります。(少額特例)
Q6.少額特例の対象となる一定規模以下の事業者とは?
A6.次のいずれかの事業者が対象です。
・基準期間(前々事業年度)課税売上高が1億円以下の事業者
・基準期間の売上高が1億円超であっても特定期間(個人事業者は前年の1~6月)の課税売上高が5000万円以下の事業者
Q7.少額特例は、いつまで適用される?
A7.対象期間は、インボイス制度開始から6年間です。令和5年10月1日~令和11年9月30日までの間に行う課税仕入が対象となります。
事業年度の途中であっても、令和11年10月1日以後に行う課税仕入は、少額特例の適用はありませんので注意が必要です。
Q8.少額特例の対象となる1万円未満は、税込、税抜のどちらで判定されますか?
A8.税込金額が1万円未満かどうかを判定します。
Q9.例えば、9,000円と6,000円の商品を同時に購入した場合(合計15,000円)、それぞれの商品が少額特例の対象になりますか?
A9.少額特例は、1回の取引合計額が1万円未満かどうかで判定します。
この場合、合計15,000円の取引となるので、少額特例の対象とはなりません。
令和5年4月1日から中小企業の月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。
【残業制度について】
労働時間とは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間のことです。
残業についても同じで、残業をするにあたっては、労働者が所定労働時間(就業規則等で定めた労働時間)内で終わらない業務について使用者に残業申請を行い、使用者が承認するといった手続きが必要になります。
●所定労働時間:就業規則等で会社が定める労働時間
●休憩:所定労働時間が6時間超の場合は45分以上、8時間超の場合、1時間以上必要
●法定内残業:所定労働時間を超え、法定労働時間までの残業。残業代の支払は必要ですが割増賃金は不要。
●法定外残業:法定労働時間を超える残業。割増賃金を支払う必要がある。
法定外残業と法定休日の労働を行わせるには、従業員との間で労働基準法第36条に基づく協定(サブロク協定)を結び、労働基準監督署に届出する必要があります。
【令和5年4月1日から変更となる内容】
令和5年4月1日から、中小企業の割増賃金率が25%から50%に引き上げられます。
割増賃金に関して就業規則に定めがある場合、変更が必要になることがあるので、自社の就業規則を確認しましょう。
法定休日の労働時間は「月60時間」の算定には含まず、割増賃金率35%です。
なお、残業申請書を整備するなどルールを明確にすれば、非効率的な残業を減らすことができます。労務管理の見直しの際に合わせて検討しましょう。ただし、明らかに所定労働時間内に終了しない業務量を与えている場合や、慢性化している残業を使用者が黙認している場合は、上記の手続きがなくても残業と認定さるので注意が必要です。
<令和5年4月1日からの残業割増賃金率>
1ヵ月の時間外労働(1日8時間・1週40時間を超える労働時間) | 60時間以下 | 60時間超 |
大企業 | 25% | 50% |
中小企業 | 25% | 50% |
<割増賃金の算出方法>(1ヵ月の起算日が毎月1日、法定休日が日曜日の場合)
日 | 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 5時間 | 2 5時間 | 3 | 4 2時間 | 5 3時間 | 6 5時間 | |
7 5時間 | 8 2時間 | 9 3時間 | 10 5時間 | 11 | 12 5時間 | 13 5時間 |
14 | 15 3時間 | 16 2時間 | 17 | 18 3時間 | 19 3時間 | 20 3時間 |
21 | 22 3時間 | 23 3時間 | 24 2時間 | 25 1時間 | 26 2時間 | 27 1時間 |
28 3時間 | 29 1時間 | 30 1時間 | 31 2時間 |
白色 | 緑色 | 赤色 |
60時間以下の時間外労働 | 60時間超の時間外労働 | 法定休日労働 |
25%割増 | 50%割増 | 35%割増 |
【変形労働時間制】
労働時間の長短が時期によってハッキリしている場合、変形労働時間制を利用することで、残業を抑えられる場合があります。
(1)1年単位の変形労働時間制
1ヵ月を超え、1年以内の一定期間を平均し、1週間あたりの労働時間が40時間以内の範囲において、特定の日または週に1日8時間または1週40時間を超え一定の限度で労働させることができます。
(2)1か月単位の変形労働時間制
1ヵ月以内の一定期間を平均し、1週間あたりの労働時間が法定労働時間を超えない範囲内において、特定の日または週に法定労働時間を超えて労働させることができます。
(3)1週間単位の非定型的変形労働時間制
従業員が30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店の事業において、1週間単位で毎日の労働時間を弾力的に定めることができます。
(4)フレックスタイム制
3か月以内の一定期間の総労働時間を定めておき、労働者がその範囲内で各日の始業および終業の時刻を選択して働く制度です。
変形労働時価寧を導入する場合、就業規則や労使協定の改定、労働基準監督署への届出が必要となることがあります。
令和5年10月1日から消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートします。
スタートに合わせて適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、原則として3月31日までに登録申請をする必要があります。
3月31日の期限後の申請であっても令和5年9月30日までの申請については、インボイス制度開始の令和5年10月1日を登録開始日として登録されることになりました。
Q1.インボイス(適格請求書)を発行するための手続きは?
A1.インボイス(適格請求書)を発行するためには、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を税務署長に提出し、適格請求書発行事業者の登録を受ける必要があります。
登録を受けると、登録番号や公表情報が記載された「登録通知書」が発行されます。また、国税庁「適格請求書発行事業者公表サイト」に名称、登録番号等が掲載されます。
Q2.いつまでに適格請求書発行事業者の登録申請をする必要がありますか?
A2.インボイス制度が開始される令和5年10月1日から登録を受けるには、原則として令和5年3月31日までに登録申請が必要です。
令和4年12月23日に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」において、4月1日以後の登録申請であっても柔軟に対応する方針が示されました。これを受け、令和5年9月30日までの申請については、インボイス制度が開始する令和5年10月1日を登録開始日として登録されることになります。
Q3.免税事業者が適格請求書発行事業者の登録申請を検討する際、注意点はありますか?
A3.免税事業者が適格請求書発行事業者に登録すると、課税事業者として消費税の申告・納税が必要になります。
令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合、登録希望日(提出から15日以後の日)から課税事業者となる経過措置があります。令和5年10月1日より前に登録通知を受けた場合でも、登録の効力は令和5年10月1日から生じます。
例えば、事業年度が1月1日~12月31日の免税事業者が令和5年10月1日から登録を受けた場合、令和5年1月1日~令和5年9月30日は免税事業者、令和5年10月1日~令和5年12月31日は課税事業者となります。
この経過措置の適用を受けるには、登録日から課税事業者となりますので、「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要はありません。
Q4.免税事業者から適格請求書発行事業者になった場合、負担軽減措置が設けられるそうですが、詳細は?
A4.税負担・事務負担を軽減するため、売上税額の2割を納税額とすることができる特例(2割特例)が予定されています。
消費税の申告には、売上や仕入にかかる消費税額等の集計やインボイスの保存などが必要です。しかし、この特例を適用すれば、所得税・法人税の申告で必要となる売上・収入を税率ごとに把握するだけで、申告書を作成することができます。この2割特例は、事前の届出が不要であり、申告時に選択適用することが可能です。確定申告書に2割特例を適用する旨の付記が必要です。
【2割特例】
対象者:免税事業者から適格請求書発行事業者になった方
(2年前の課税売上高が1,000万円以下等の要件を満たす方)
対象期間:令和5年10月1日~令和8年9月30日を含む課税期間
(個人事業者は、令和5年10月~12月の申告から令和8年分の申告まで対象)
令和4年分の所得税の確定申告は、令和5年2月16日(木)~令和5年3月15日(水)です。
個人事業主や不動産オーナーだけでなく、会社役員やサラリーマンなどの給与所得者でも副業など一定の収入があれば確定申告が必要です。
補助金や協力金などの申告漏れには注意が必要です。また、令和4年分からの改正点があるので注意しましょう。そして、還付を受ける場合も確定申告が必要です。
【令和4年分からの主な改正点】
雑所得は「公的年金等」「業務に係るもの」「その他」の3つに分類されます。
<雑所得の分類>
●公的年金等:国民年金、厚生年金など
●業務に係るもの:フリマアプリ、シェアリングエコノミーなどの副業に係る所得
●その他:個人年金、暗号資産取引から生じた損益など、上記以外の所得
このうち、副業などの「業務に係るもの」について、令和4年分から改正点があります。
(1)改正の対象となる収入
フリマアプリやネットオークションでの資産の売却、食品デリバリーなどで得た小規模の業務による収入は副業収入に該当します。
そして、このうち経費を差し引いた額は「業務に係る雑所得」として確定申告が必要です。ただし、給与所得者の場合、差し引いた額が20万円以内であれば申告は不要です。
業務に係る雑所得 = 副業収入 ー 経費
(2)取引書類の保存義務化
令和4年分から副業などの「業務に係る雑所得」については、前々年の収入を基準に、取引書類の保存や収支内訳書の添付などが新たに義務付けられました。
<令和4年度からの改正点>
前々年の「業務に係る雑所得」に該当する収入金額 | 新たに義務化される点 |
1,000万円超 | ・収支報告書の添付 ・現金預金取引関係書類の保存(保存期間:5年) |
300万円超 | ・現金預金取引関係書類の保存(保存期間:5年) |
※令和4年度の場合、前々年は令和2年分が該当
※現金預金取引書類:現金預金の取引に関係して作成された領収書、請求書やその写し
なお、雑所得の場合、発生した損失を他の所得と損益通算することはできません。
【個人事業主の確定申告の注意点】
(1)支援金、補助金、助成金などは収入として計上
行政から事業の為に受け取った補助金や協力金等は、収入として計上します。計上漏れがないか確認しましょう。
主なものは以下の通りです。
<収入に計上する補助金など>
●緊急事態宣言・まん延防止等重点措置に伴う月次支援金
●小規模事業者持続化補助金
●事業復活支援金
●事業再構築補助金
●雇用調整助成金
●IT導入補助金
●ものづくり補助金
●感染拡大防止協力金
●全国旅行支援(県民割なども含む)・イベント割などに伴う給付金
等
(2)家事消費は経費にならない
事業に必要な費用(仕入代金、広告宣伝費、従業員給与、水道光熱費など)は業務上の経費となります。しかし、自分や家族の生活費、飲食代、医療費など家事費は業務上の経費として認められません。
主な家事費は以下のとおりです。
<事業の経費とならないもの>
●自分や家族の生活費(家族と食事に行った費用など)
●娯楽のための費用
●医療費
●家族に支払う家賃や給与(青色事業専従者給与を除く)
●事業主自身の生命保険料(保険料控除の対象)
●自宅部分の火災保険料
●自宅の住宅ローンの利息
等
(3)家事関連費は業務上必要な部分のみが経費
店舗併用住宅の地代家賃や水道光熱費、事業兼プライベート用の自動車関連費用など、事業とプライベートの両方で使われている経費は家事関連費といいます。
原則として、家事関連費は必要経費となりません。ただし、業務上必要な部分を明確にして合理的な方法で按分できれば、事業に必要な部分は必要経費になります。家事関連費の按分比率は、業務上必要である割合が明らかに区分できるように事業者自身が設定します。
<家事関連費の按分比率の基準(例)>
家事関連費 | 按分基準 |
---|---|
地代家賃 損害保険料 減価償却費 修繕費 固定資産税 火災保険料 住宅ローンの利息 等 | ◆面積 ◆使用度合 ◆使用時間 |
水道光熱費 電話代 インターネット接続料 等 | ◆使用時間 ◆使用頻度 ◆照明器具の数 |
事業と生活用に利用する自動車の保険料 自動車税 車検費用 等 | ◆業務に係る走行距離 |
【給与所得者の確定申告の注意点】
会社役員やサラリーマンなどの給与所得者は、給与収入が年間2,000万円以下で年末調整を受けていれば、原則として確定申告をする必要はありません。ただし、以下のような給与収入以外の収入があると、確定申告が必要となる可能性があります。
給与・退職金以外の収入について、必要経費などを差し引いた後の所得金額合計が20万円を超える場合、確定申告が必要です。
<給与・退職金以外の収入の例>
●副業収入
●土地や建物の売却による収入
●競馬や競輪による収入
●保険の一時金や満期返戻金
以下、詳しくみていきましょう。
(1)役員と会社との取引によって得た収入
同族会社の役員が会社から受け取った収入は確定申告が必要です。
<確定申告の必要な収入>
●会社に賃貸している不動産の賃貸料
●会社から受け取った貸付金の利息収入
等
(2)満期保険金などの一時所得がある
以下のような一時所得がある場合、確定申告が必要な場合があります。
一時所得は、他の一時所得との合計額が年間50万円を超えない限り確定申告をする必要はありません。
また、給与所得の方は、給与以外の所得が年間20万円を超えない限りは確定申告は不要となります。
そのため、一時所得の合計額が90万円を超えない場合、確定申告は必要ありません。
<一時所得の計算>
総収入-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最高50万円)
<確定申告が必要な一時所得>
●保険料負担者が受け取る生命保険や損害保険の満期保険金(一時金)、解約返戻金
●ふるさと納税の返礼品(一般にふるさと納税額の30%程度が返礼品の額)
●懸賞や福引きの賞金品
等
(3)副収入がある
フリマアプリやネットオークションでの資産の売却、仮想通貨の売却による収入は、雑所得となります。
収入から仕入や経費を除いた所得が20万円を超えると確定申告が必要です。
ただし、生活用の資産(古着や家財など)を売却して得た所得は非課税とされているので、確定申告は不要です。
また、貴金属や宝石、書画、骨とう品などで、1個または1組が30万円を超えるものを売却した場合の所得は、譲渡所得として確定申告が必要です。
(4)資産の売却による収入
不動産や金などの資産の売却による収入は、譲渡所得として確定申告が必要です。
また、譲渡所得から最高3,000万円の控除が受けられる特例を適用する場合や、マイホームの買い替え時の譲渡損失を給与所得や事業所得など他の所得から控除(損益通算)する場合には、確定申告が必要です。
(5)海外資産の運用による収入がある
日本国内の居住者が、海外の有価証券等の配当・利子、海外の不動産の賃料や売却などで得た収入は、日本と海外の両方で税金がかかります。
よって原則、日本での確定申告が必要です。
【確定申告により還付や所得控除が受けられる】
(1)医療費控除
医療費控除を受けるには確定申告が必要です。
自分または生計を一にする家族が支払った医療費について、一定額を超えるときは医療費控除を適用できます。
申告の際は、医療費の領収書などから作成した「医療費控除の明細書」の添付が必要です。なお、領収書は5年間保存します。
(2)災害による損失は雑損控除を利用
台風や地震などの災害により生活に必要な資産(自宅や家財、自家用車)に被害を受けた場合、雑損控除が受けられる可能性があります。雑損控除を利用する際、損失額や災害に関連した支出額を確認するため一定の書類が必要になります。
<雑損控除に必要な書類の例>
●被害を受けた資産の価額がわかるもの(売買契約書や領収書など)
●災害関連の支出額がわかるもの
●被害を受けた資産について支払われた保険金などの金額がわかるもの
●り災証明書
(3)ふるさと納税
ふるさと納税を行った場合、寄付金控除を適用できます。適用するためには、寄付した団体などから交付された「寄付金の受領証」などが必要になります。
令和5年10月1日から消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)がスタートします。
原則として、買い手側は、売手から受け取ったインボイス(適格請求書)等を保存しなければ、仕入税額控除ができなくなります。
今回は、仕入税額控除とインボイスについてを見ていきます。
Q1.インボイス制度で、買手(仕入)側が注意すべき点はありますか?
A1.インボイス制度では、買手側は原則として一定事項が記載された「帳簿」と売手(取引先)から受け取った「インボイス」を保存しなければ、仕入税額控除の適用を受けることができなくなります。
受け取るインボイスへの対応として、取引先が発行する書類(請求書、領収書、納品書等)のうち、どれがインボイスなのか、インボイスの記載事項を満たしているのか、どのようにインボイスを受け取るのかなど、取引先に準備、協力してもらわなければならないことが多くあります。
経理業務の見直しを含めて、自社が発行するインボイスの対応よりも時間がかかることが予想されます。
取引先から受け取るインボイスについて、次のことを早期に進めましょう。
1、取引先が適格請求書発行事業者かどうかを確認する(インボイスを発行できるのは登録事業者のみ)
2、取引先の適格請求書発行事業者の登録番号を確認する(登録申請をしていない可能性もある)
3、取引先のインボイス制度への対応状況を確認する
4、取引先とインボイスにする書類を決めていないときは打合せをする
5、インボイスの受取方法(紙または電子)を確認する
6、取引先から事前にインボイスを受け取り、様式を確認する(不足する項目があれば修正依頼をする)
7、受け取ったインボイスからの仕訳計上の方法とタイミングを確定する
8、受け取ったインボイスの保存方法を確定する
Q2.簡易課税制度を選択していますが、インボイス制度への影響はありますか?
A2.簡易課税制度では、課税売上高から納付する消費税額を計算するため、仕入税額控除の要件としてインボイスの保存は求められていません。
消費税の計算はこれまで通りの方法でよいため、帳簿や書類の保存方法を変更する必要はありません。
Q3.電車やバスを利用した場合、インボイスの保存はどうすればよいですか?
A3.公共交通機関(鉄道、バス、船舶)の運賃については、3万円未満であれば一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
(1)売手からインボイスの交付を受けることが困難な取引
以下の取引については、買手側は帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
1、3万円未満の公共交通機関(鉄道、バス、船舶)の運賃
2、3万円未満の自動販売機での購入
3、郵便切手を対価とする郵便サービス(郵便ボストに差し出されたものに限る)
4、従業員等に支給する通常必要と認められる出張旅費、宿泊費、日当及び通勤手当等に係る課税仕入
5、簡易インボイスの記載事項(取引年月日を除く)を満たす入場券等が、使用の際に回収される取引
6、古物営業、質屋、宅地建物取引を営む事業者が、適格請求書発行事業者でない者から古物、質物または建物を当該事業者の棚卸資産として取得する取引
7、適格請求書発行事業者でない者から再生資源または再生部品を棚卸資産として購入する取引
上記の取引は、帳簿の記載事項に関し、通常必要な記載事項に加え、次の事項の記載が必要となります。
●帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められるいずれかの仕入に該当する旨
例)
1、3万円未満の公共交通機関による旅客の運送に該当する場合:「3万円未満の鉄道料金」
2、適格請求書発行事業者の記載事項(取引年月日を除く)が記載されている入場券等が使用の際に回収される取引に該当する場合:「入場券等」
●仕入の相手方の住所または所在地
(2)現行の「3万円未満の課税仕入」の規定は廃止
現行では「3万円未満の課税仕入」や「請求書等の交付を受けなかったことにつき、やむを得ない理由があるとき」は、一定事項を記載した帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められていますが、インボイス制度の開始後は認められなくなります。
なお、事務負担の軽減措置として、基準期間の課税売上高が1億円以下の事業者について、6年間、1万円未満の課税仕入については帳簿のみの保存で仕入税額控除を可能とする令和5年度税制改正が検討されています。
Q4.事務所の家賃を口座振替で支払っています。請求書や領収書の発行は受けておらず、通帳に口座振替の記載が残るだけです。不動産賃貸契約書は作成しています。この場合、インボイスの保存はどうすればよいですか?
A4.通常、契約書に基づき代金決済が行われ、取引の都度、請求書や領収書が発行されない取引であっても、仕入税額控除を受けるためには、原則としてインボイスの保存が必要です。
インボイスの記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された不動産賃貸契約書とともに通帳や銀行が発行した振込金受取書(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を保存することで、仕入税額控除の要件を満たすことになります。
あるいは、貸主から一定期間の賃借料についてのインボイスの交付を受け、それを保存することによる対応も可能です。
なお、令和5年9月30日以前からの契約について、契約書に登録番号等のインボイスとして必要な事項が不足している場合、別途、登録番号等の記載が不足していた事項の通知を受け、契約書とともに保存していれば差し支えありません。